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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
声。
指先には捕らえられない、不可視のくすぐり。
この確かで曖昧なものを自慰の副食に──…否、いっそ呼び水にしている私のような人間は、意外と珍しくないかも知れない。その可能性が幾らか私を臆面もなくさせたのは、つい最近だ。
アンドロイドの普及によって、インターネット社会は興隆した。カメラアプリの精度向上は論をまたず、今やにわかの素人でも、根気次第で過不及ない動画の製作者にもなれる時代だ。
そうした動画の投稿サイトは、大手であれば、ほぼ誰もが知る。カラオケ音声を併せた静画や、ネット絵師だのハンドメイド作家だの作品製作動画。一発芸に、最新カフェやイベントレポート、メイクアップ動画が、主に盛んな分野ではないか。そして、中高生から社会人まで幅広いユーザー層の手がける、購入品紹介やブイログ(videoの頭文字とblogという単語をくっつけた造語らしい。つまりは動画形式ブログ)。
私の気に入っているユーザーは、その購入品紹介とブイログを中心にアップロードしている女の子だ。
名前は、きら音ちゃん。
とりわけ人気ユーザーは学生が多くを占めるこのジャンルで、きら音ちゃんは社会人でありながら、抜きん出た地位を確立している。
動画の情報によると、きら音ちゃんはアパレルに関わる職種に就いているらしい。そのためか、トレンドや最新の情報収集、発信が早い。
きら音ちゃんの購入品紹介は、年頃のユーザーであればニュース番組同然に食いつくだろうし、ファッションモールなどには疎遠な私が観ても胸が逸る。色とりどりの、きらきらとした艶を放つ、服飾雑貨や化粧品、インテリア、洋服。ちょっとしたアニメーション、照明や背景までパステルカラーに統一したきら音ちゃんの演出が、けだしそれらを実物以上に魅力的に見せている。ブイログはそれほど凝った造りではないが、アクセサリーのリメイクやカフェ紹介など、いかにも可愛いと形容すべき仕上がりだ。
そして私は、並んでゆく購入品の数が多ければ多いほど、話が長くなればなるほど、ある一種の歓喜に至る。