この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
親睦会とは名ばかりの、従業員らの会する場は、結局のところ仲の良い者同士が語らい合う宴席だ。
私を含む事務に限って、例外だ。誰と話しても浮かない代わりに、踏み込んだ懇親も図れない。
マネキン達の群れに迷い込んでいると、つと、むず痒くなる。
何故、見栄えを繕うために思考や時間をつぎ込むのか。自ら装飾する品々を生真面目に吟味して、さしずめ解けない難問と睨み合ってでもいる様子でコーディネイトを錯誤する、二本足の生命体。
私も同じだ。
何故、可愛いと形容されるものを。もとより可愛いと評価されるに値するための定義とは。
優川さんと話している時は胸が踊る。販促マニュアルに則ったリップサービスであっても、彼女の流暢な唇が私を称えると、舞い上がる。
相手が優川さんに限る。彼女に出逢う以前は、大型SNSで企画されたオフ会の幹事さんに限った。その前は、私が新米事務員だった頃、仕事を教えてくれた先輩。…………
私は、可愛いものを好むタイプだと評価されがちだ。そうした自分自身に安堵している。女の子の無難な趣味。うわべだけでもプラスの評価を投げかけられるライフスタイルを好んでいる、自分が好き。
大学にいた時分、放送部に所属していた。
昼休みの校内放送、流行りの邦楽を流しておいて、部員達は雑談に花を咲かせていた交流クラブ紛いの団体は、それらしい活動も行なっていた。
最近観た映画。放送中のドラマやアニメに、レンタルしていたDVD、参考にしているファッション誌。部員達が各々気に入っているものを題材にして作成した紹介文を読み上げて、流していた。
私は気に入った小説を紹介していた。内容に差し障らない程度に需要の喚起が見込める箇所を朗読して、美点を語る。
こうした部に集った顔触れなだけあって、皆、この活動には熱が入った。映画のワンシーンを再現する部員もいたし、ファッション誌を紹介していた部員には、雑誌を脱線してフリートークを延々と続けていた子もいた。