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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
同じ媒体を取り上げても、語り手次第で味が変わる。題材が被ったことはほぼなかったが、おそらく私の紹介していた小説も、他の部員が取り上げていたら、仕上がりはきっと違っていた。
放送に流した私の言葉は私の言葉。既存の題材があったとしても、聞き手の存在を前提に話している間だけは、何者の支配も免れていた。顔も見えない聞き手の空気に、私の色をしたためる。…………
私が消えてしまわないために、飾った姿より確かなもの。声を出していることは必要だった。
それで動画の配信を始めたのだ。
紹介しているものなど二の次だ。フリルやレースの洋服も、レプリカ感が可愛いフェイクジュエリーのアクセサリーも、表現という行為のための資材に過ぎない。
飛び入ってきたコスメショップの従業員は、さしずめドレスを着た小動物だった。
小柄な体躯に、虹色のガーベラが総プリントされたワンピースが華やぐ。入金を終えた旨を優川さんに報告して、退勤後の労い文句を上司と二言三言交わす彼女を飾ったフリルは、肩口や腿で、あるじのために風にそよぐ花を気取って動作した。二つに結ったボブの黒髪も、マネキンさながらに化粧した顔をより明るめる。
「お客様……?!」
ピンクブラウンのマスカラに濡れた睫毛の影を受けた黒目がちな目が私に向くや、ひときわ大きく見開いた。