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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石


「あっ」

「パティスリーHamadaにいつも来て下さっていますよね。ここに勤められていたなんて……!どちらのお店ですか」

「運営部、事務です」

「そうなんですか。入管試験を受けた時は、いらっしゃらなかったから……」

「多分、お休みでした。お会い出来なくて……、今日は会えて良かったです」

「わぁ、覚えて下さっていたんですね。今日は出勤だったんですか?お洋服可愛い!」


 コスメショップとパティスリーを兼業している大学生は、名前を川原佳子(かわはらよしこ)といった。



 Hamadaは、近隣にあるマカロン専門店だ。

 開店当時、いかにもフォトジェニックな見目とラグジュアリーな値段設定、とりどり揃ったフレーバーという、なかんずく好みの分かれるスイーツが流行っていたのも補翼して、メディアももてはやしていた。時は流れて、移り気な客達の関心が落ち着いた今でも、一部の客足を離さない。淡雪を優しく固めた風な絶妙な生地と、舌に染み通るバタークリーム。街中なのにテーブル席はたったの四つ、広々とした間取りに西洋風のインテリアを散りばめた店内に、ピンクと白のマカロンタワーが彩るショーウィンドウは、店主のこだわりが横溢していて、表通りをやや入ったところにひっそりとある隠れ家めいた店構えも定評がある。



 あの日も、私はパティスリーHamadaを訪っていた。


 …──よく来て下さっていますね。有り難うございます。


 にわかに聞こえたその声は、しめやかに流れるオルゴール調のBGMに染み渡るようにして私の鼓膜をくすぐった。店主、濱田つばきさんだとすぐに分かった。
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