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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石


「もちろん、ブログ映えのために彼と一緒になったんじゃないわ。趣味を職業にしているところ、お互い理解出来るし、気を遣わないの。……と言っても、ストレスだってある。秘密もね」

「秘密、ですか」

「そう、秘密。きら音ちゃんは?休みの日とか、どうやって過ごしているの」


 つばきさんは、秘密を露呈しなかった。私が興味を示しても、酩酊の気色が息差しても、そうして私は、いつの間にかつばきさんを上回る自分自身の情報を口にしていた。情報には、私の動画投稿ユーザーとしての顔、きら音の存在も含んでいた。







 星がひときわ輝く夜更け、私は星音ちゃんを私宅に招いた。


 パートナーは夜勤だ。


 本数の減った電車は、繁華街とはまるで別世界の地元へ私達を連れ帰り、私はどこか人目を忍ぶようにして帰路を辿った。


 夜陰に鈍った私の目は、星音ちゃんだけはありあり捕らえていた。
 白く細い首筋に添って波描く癖毛。小さな顔を大袈裟に飾るパステルピンクのシフォンのリボンと、やはり春先に相応しい薄手のワンピースが、適度に発達した肢体の線をもったいぶらせながら揺れる。街で話していた時は、私の耳が、都合良く機能しているだけだと思った。だが、しめやかな家並みを歩いて遠慮がちになる星音ちゃんのささめきは、聞けば聞くほど、私が劣情をきたすに不可欠としていた音声。


 今日まで皆無に等しかったお客様との親交が、貴重なのだ。星音ちゃんという、スイーツの世界でいうマカロンのように小さく可憐で濃厚な甘みを含む人物を、もう少し知りたいだけ。

 その声を、他意なく聞いていたいだけだ。



 胸奥に繰り返している内に、私は軒先に着いていた。

 星音ちゃんを招いた理由。そこに後ろ暗いものはない。後ろ暗いものはなくても、きら星ちゃんの配信動画を知らない振りを貫き通して。…………
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