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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石


「でも私、つばきさんの思ってるような子じゃないかも。動画だって、本当に可愛い子がやってるのとは、違うから。つばきさんのマカロンは大好きだけど、動画で話しているほど、私はああいうのに飛びつかないし……」

 ピンク色ばかり目路に入ると食傷する。私は自己演出から出来ている。

 想像に応じた女の子を演じていれば、無難かも知れない。つばきさんはけだし適度に私を可愛がってくれて、私も初々しい恋の甘さだけを味わえる。

 だのに足りない。つばきさんにうわべの内側に触れて欲しい。何よりもっと惹かれてしまったあとにつばきさんが私を見損なう未来を思うと、今うわべをはだけてしまう方がましだ。

「大好きなつばきさんと一緒にいるのに、心までおめかし出来なくてごめんなさい」

「貴女が理想通りの人だったら、私も、こんなこと話そうとは思わなかったかも知れないわ」


 向かい合わせの膝と膝は触れ合っていた。湯上りのつばきさんは、やはり誘惑的な肌を匂わせて、ベロアの艶を含んだ黒髪を微笑みの側に流している。ローテーブルには、昨夜と同じカモミールがカップを満たしていた。

「Hamadaの店に相応しい、等身大の女の子達が夢を見てくれることの出来るパティシエに……そうでありたい、そんなオーナーでなければいけないと、話したわよね」

「つばきさんの生活は、絵に描いたようなものですもん。もしかして、全く興味なかったんですか?」

 昨日ダイニングバーで、その唇が怨じた腫瘍。

 ストレス、そして秘密。

 つばきさんにも知られざる素顔があるとすれば、彼女も私と同様で、フランスの生活や俗に言う夫婦円満とやらに微塵の執着もないのかも知れない。

「言ってくれたって良いじゃないですか。私もカミングアウトしたんだし」

「星音ちゃん、幻滅するわ。今私にがっかりしたら、帰りはタクシーしか呼べない」

「呼ばなくて良いです。むしろ仲間です」


 つばきさんの躊躇いは、狷介に彼女を引き止めていた。
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