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愛してるから罪と呼ばない
第1章 逃避行
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お帰りなさい。お茶に付き合ってくれないかしら。
香凜は、片岡誠二の母親改め片岡美衣子が台所を立ち回るのを眺めていた。
引き締まった潤沢の顆粒層がきらめく美顔に、茶色がかった天然の毛先が白い肩に触れて遊ぶ。丘陵が薄布を押し上げる。彼女の二つのたわわなまろみの下方からは、なめらかで締まった線が続いて、あえかなくびれを広がる骨盤に続く臀部が、ゆったりとしたロングパンツをぷるりと揺らす。
きびきびとした立ち振る舞いは、やんごとなき地位の女に相応しからぬものだ。実年齢よりひと回りは若年に見えるプロポーションの姑は、香凜がレンタルDVD店から帰ってくるや、ティーポットを棚から下ろした。
美衣子が良人の不在時、香凜を話し相手にしたがるのは茶飯事だ。
酒もお茶も嗜む彼女は、茶葉も豊富に取り揃えている。今日ティーポットを彩ったのは、スウェーデン王室御用達だという銘柄の、花とフルーツのフレーバーティー。給湯器の湯がポプリを彷彿とする着香葉に落ちるや、湯気とともに好い香りが広がった。
一端、香凜は逃げるように私室に駆け込んだ。荷物を置かなければならなかったからだ。荷物には、この友好的な姑の目には決して触れてはいけないものが詰め込んであった。