この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
ちゅ…………
柔らかな弧を描く弾力は、私の唇に吸いつくや、ともすればつばきさん自身の作るスイーツの質感で、ほろほろととろけるような甘みをもたらした。私は触れるだけのキスに歓喜しながら、気も遠くなるような思考の彼方で確かめる。
つばきさんの、唇だ。
代わって私がつばきさんの唇に、自分のそれを押しつけた。小鳥と小鳥のじゃれつきにも似た啄ばみは、触れるより先立って私をつばきさんの香りに満たす。
「ん、はぁ」
「……ぁ、あ……」
どこからか入り込む甘やかなものは無色透明で、匂いもなければ味もない。そのくせやはり無限に甘く、私に刹那を重ねたがらせる。ただ触れ合うだけの二人を、ひとしお深いまぐわいに誘う。
つばきさんの舌先が、私の唇を愛撫した。私はその舌先に自分のそれを絡めつけて、こぼれた唾液を吸い上げる。メレンゲの匂いが鼻を掠めた。歯列をなぞって、唇に触れて、舌を重ねる。
「あぅ、はむ」
「あ、……はぁ」
「つばきさん、甘いです」
「昼間食べたパウンドケーキでも残っていたのかしら」
「ふふ、そうかも」
「星音ちゃんは、さっきのマカロンが残っていたみたいね」
…──ホイップクリームを塗りたくったら、苦しいほど甘いお菓子になっちゃうかも。
つばきさんの顔を目に焼きつけたい。キスを貪っていたい。私は唇の虚無を惜しんで、つばきさんの笑顔を追う。
しとやかな手先がホイップクリームをゴムベラに掬った。
くしゅ…………
ぴと。
「んっ……っっ」
つばきさんが私にランジェリーをつけるのは、造作なかった。それは器用な手つきで、私の乳房と脚の割れ目をホイップクリームに覆い隠した。柔らかな無機質がこすれる度、私の肉叢は期待を孕んだ悲鳴を上げる。私自身の喉も喘いだ。
果てしないような賞賛を浴びる私の肉体は、もはや肉体であることを忘却する危殆に押し固められてゆく。さくらんぼを隠した私の乳房は、ホイップクリームにまみれたまま新たな果実が彩って、腹にも縦にフルーツが並ぶ。恥丘にはホワイトチョコレート。パティシエの腕は、みだりがましいスイーツを、あくまで芸術的に仕上げる。下着姿だった私は、いつしかドレスをまとっていた。ドレスをまとって、意思の覚醒を戒められた人形同然になっていた。