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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石


 ちゅ…………


 柔らかな弧を描く弾力は、私の唇に吸いつくや、ともすればつばきさん自身の作るスイーツの質感で、ほろほろととろけるような甘みをもたらした。私は触れるだけのキスに歓喜しながら、気も遠くなるような思考の彼方で確かめる。

 つばきさんの、唇だ。

 代わって私がつばきさんの唇に、自分のそれを押しつけた。小鳥と小鳥のじゃれつきにも似た啄ばみは、触れるより先立って私をつばきさんの香りに満たす。


「ん、はぁ」

「……ぁ、あ……」


 どこからか入り込む甘やかなものは無色透明で、匂いもなければ味もない。そのくせやはり無限に甘く、私に刹那を重ねたがらせる。ただ触れ合うだけの二人を、ひとしお深いまぐわいに誘う。

 つばきさんの舌先が、私の唇を愛撫した。私はその舌先に自分のそれを絡めつけて、こぼれた唾液を吸い上げる。メレンゲの匂いが鼻を掠めた。歯列をなぞって、唇に触れて、舌を重ねる。

「あぅ、はむ」

「あ、……はぁ」

「つばきさん、甘いです」

「昼間食べたパウンドケーキでも残っていたのかしら」

「ふふ、そうかも」

「星音ちゃんは、さっきのマカロンが残っていたみたいね」


 …──ホイップクリームを塗りたくったら、苦しいほど甘いお菓子になっちゃうかも。


 つばきさんの顔を目に焼きつけたい。キスを貪っていたい。私は唇の虚無を惜しんで、つばきさんの笑顔を追う。

 しとやかな手先がホイップクリームをゴムベラに掬った。


 くしゅ…………


 ぴと。


「んっ……っっ」


 つばきさんが私にランジェリーをつけるのは、造作なかった。それは器用な手つきで、私の乳房と脚の割れ目をホイップクリームに覆い隠した。柔らかな無機質がこすれる度、私の肉叢は期待を孕んだ悲鳴を上げる。私自身の喉も喘いだ。

 果てしないような賞賛を浴びる私の肉体は、もはや肉体であることを忘却する危殆に押し固められてゆく。さくらんぼを隠した私の乳房は、ホイップクリームにまみれたまま新たな果実が彩って、腹にも縦にフルーツが並ぶ。恥丘にはホワイトチョコレート。パティシエの腕は、みだりがましいスイーツを、あくまで芸術的に仕上げる。下着姿だった私は、いつしかドレスをまとっていた。ドレスをまとって、意思の覚醒を戒められた人形同然になっていた。
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