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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石

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 交際の確認もデートの約束も、つばきさんと私の間に交わされない。


 私は気分になされるがままパティスリーを訪ねていって、つばきさんからは三日に一度くらいの割合でLINEが届く。つばきさんが客席に出ている時間帯は少ない分、川原さんら従業員は私の姿を見かけては、気を利かせて彼女を呼ぶ。


 川原さん。

 つばきさんに雇われながらコスメショップにも勤務している、本業は大学生の女の子。清らかな黒髪をいつも二つに分けて結んだ彼女は、輝くような生気が顔に張りついている。若年のなせる業でもある。ただ、加えて、お洒落だの新しいものだのに敏感で、あらゆるものに積極的な、ある種の女子ら特有の生気が、けだし彼女に人工的な完成度を実現させている。

 どんな気持ちか。

 川原さんにしてみれば、私の惹かれた優川さん、つばきさんに関して、おそらく大した思い入れもない。小遣い稼ぎの場にいる親切な上司、その程度の認識だ。
 それでも、もし、万が一にも私が川原さんの立場であったとすれば、1日の大半を胸が苦艱を及ぼす糖度に冒されて、きっと仕事も手につかなくなる。

 もし、そんな万が一は存在しない。

 パティスリーHamadaは川原さんのような女の子にこそ相応しく、優川さんのコスメショップも彼女のようなスタッフにこそ務まるのだ。



「体験入店、一日からでも歓迎よ。ウチは」

「悪いです」

「もちろん星音ちゃんが転職を考えてくれるだなんて、期待してない。個人経営なんて、いつ潰れるか分からないものね」

「そういうわけじゃありません。つばきさんと一緒に仕事なんかしたら、集中出来ない。ただでさえ実家暮らしで、料理もしないのに」
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