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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石



 とりわけ人間の悪意とやらとは無縁の私も、複数の情熱を注ぎ分ける愛に関する世間の評価は知っていた。

 不甲斐ないパートナーに痺れを切らせた女の哀れ、男の傲慢。

 実際に経験して、分かった。聞いていた印象とは違った。
 私がパートナーに不満もなければ、彼に星音ちゃんより劣るところがあるわけでもない。星音ちゃんとどこが違うのか。分かるのは、彼らのどちらも、私に不可欠ということだけだ。



「来月、休み分かりそう?」


 食後の化粧チェックをしていると、彼が流し台から顔を向けてきた。


「シフト希望、まだ揃っていなくて」

「そっか。結婚記念日だろ。出来ればどこかへ行きたいんだ。無理なら別の日でも」

「分かった、空けとく。私も楽しみだし」



 結婚記念日のブログは閲覧数が伸びる。

 ここぞといったところでは私にも優ってフォトジェニックな計画を立てる彼と過ごす休日について、ふと、今年は昨年以前ほどの文章量が書けない気がした。

* * * * * * *

 不要なら切り捨てれば良いのに、今日も私は、世間と繋がっているための作業をしている。
 睡眠時間を一時間近く縮小して、髪を整えてリボンをつける。洋服選び、そして肩の凝るようなアクセサリーをとり合わせる。


 前ほど深刻ではない。

 私に浴びせられる世辞の中には、つばきさんのまごころも含んでいるからだ。

 つばきさんは私の本心を知ったあとでも、変わらず私を可愛いと言う。きら音の配信している動画を再生して、コメントやらLINEやらに感想を残して、彼女独自の楽しみ方を私に話す。


 うわべだけの称賛はぞんざいにする私でも、つばきさんのそれはかけがえなく私を包んだ。


 つばきさんは私の声を愛している。私に潜む本質を。
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