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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石
「この間、旅行行ったんだけどね。私はコテージが良かったのに、彼がビジネスホテルを譲らなかったの。雰囲気とかないわけ?って思わない?」
日曜の昼間、私は大学時代からの友人達と一ヶ月ぶりにランチをしていた。
インド風のカレーにスプーンを突き立てたまま、熱心に演説しているのは、思春期から恋人を絶やしたことのないという透子だ。透子が、彼、と呼ぶ相手。彼女に大きな変化がなければ、それは彼女が二年前から交際している証券会社の役員である。
「私は気にしないな。金沢でしょ。ホテルでのんびりするより、さくっと泊まって観光してる方が有意義じゃない」
「観光しても、夜がなくなるわけじゃない。納得いく理由があるならともかく、安くつくから!だよ?」
「さすがご時世。重役がシビア」
「倹約家の方が、結婚したら困らないよ」
「浪費の心配はない人だけどね。でも、やっていけるのかなって。価値観の違いって、こういうところから芋づる式に出てくるでしょ。使うところが違うっていうか。っていうか、男の人がそうなのかな」
私は好き好きな意見の交う輪の中で、オムライスをつついていた。
トマトが良い具合に甘い。透子も恋人にこれくらい甘くなってやれば良いのに。
とりとめない私の思考に、つと、雑念が差した。
つばきさんのパートナーならどう出るか。
透子のようにムードを重んじたがる女との旅先、あの洒落たパティシエのパートナーなら、とびきり見栄えのする宿泊先を選ぶだろう。それこそいけ好かないまでに。
「…………」
「星音はどっちが良い?」
「えっ」
「安定思考か、ロマンティスト」
「うーん……」
「透子には参考にならないよ。星音、昔からロマンティスト一択だもん」
「そっかな」
「性格か貯蓄額どっち取る?」
「……性格」
「でしょ」