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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石


 三人の記憶にいる私だけ、一人、三年前に置き去りになっているのではないか。

 無理もない。

 私は在学中も卒業したあとも、色めいた話題を提供出来た試しがない。ささやかな片想いこそ経験しても、相手の貯蓄を知るまでの関係に発展しない。興味も湧かない。


 こうして私は、三年前のみならず、この時代にもいつかとり残されていくのだろう。

 透子はぼやきながらも本音をぶつけ合える懇意の男と婚姻して、とりわけ平和な恋愛をつまんでいる彼女らもやがて収まるべき場所に収まる。

 愛だの結婚だのだけが人生の重要課題ではなきにしろ、私はつばきさんといつまで続くのか。私には、今日この瞬間までつばきさんに永遠を求めようという発想もなかった。つばきさんの気まぐれも、彼女の左手薬指に煌めくプラチナに比べれば、虚しいほど朧げだ。


「星音は?コスメショップの優川さんは、相変わらず眺めているだけ?」

「うん、まぁ」

「ダメ元で告っちゃえば?最近、女の子も対象だっていう人多いよ」

「そこは問題にしてないんだけど……」

「星音の場合は勇気でしょ」

「私達の中じゃ一番ないよねー」


 目も眩むような笑い声に流されて、私も過不及ない声を立てた。


 他意ない女のお節介。友情。

 そこに信頼関係こそあっても、悪意はない。欠乏は、私の勇気だ。


 格別に未来の保障されない愛念に、肉体関係に、興じている事実を打ち明けられない。本人を前にしても、終生一緒にいて欲しいと求められない。


 不義を羞じているのではない。今も昔も、私は変わらないだけだ。
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