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愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石

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 人間同士の秘め事は、知識を基準にして思い描いていたより遥かに正気を失くす。
 切実に恋の対象の相手であれば、指を絡めるまでもなく、会話を交わした来し方を振り返るだけでさばかりエクスタシーが訪うのだから、身体を重ねたとなれば、もれなく光の潮汐波にさらわれるのも道理に適っている。


 個人的な同窓会をした週明け、私はつばきさんの家にいた。夜に留守にしがちなパートナーの残り香は、つばきさんの部屋を除いて、そこかしこに染み込んでいる。私はキッチンで囲うつばきさんの手料理に舌鼓は打っても、彼女の私室が最も居心地好く感じていた。


「はい」

「いつもお気遣い有り難うございます。……あ、ストロベリー?」


 カップを持ち上げた私は臭覚が幻を嗅いだのかと思った。鼻が時に目より敏感だというのは、事実らしい。まろやかな甘酸っぱい湯気を昇らせる水面は、濃いアイボリーの色をしていた。


「苺のミルクティー。星音ちゃん、ベリー系のマカロンをよく食べてくれているから」

「覚えていてくれて嬉しいです。はい、大好き」


 着香葉を濾した紅茶は、ストレートで飲むのが一般的だ。あくまで一般的な認識で、規則ではない。アールグレイもミルクを注ぐと果実感と甘みが引き立て合うし、今の苺のミルクティーも同じだ。息を吹きかけて口に含むと、いつかのデコレーションケーキの匂いがした。


「つばきさんのパートナーさんは良いな。毎日、こういうの飲めて」

「茶葉、少し持って帰る?」

「ううん、つばきさんが淹れてくれたやつじゃないと、意味ないから」


 私はどれだけ期待に満ちた目をしているのか。どれだけはしたない目でつばきさんを見つめて、その姿を焼きつけようとしているのか。
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