この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
愛してるから罪と呼ばない
第2章 そのマカロンはまるで宝石

* * * * * * *



 マカロンが私の薬になっている。


 つばきさんのマカロンは、バッグに潜ませているだけで、私に余分な思考の作動をとどまらせる。例の傲慢な煩悶に聞き手を巻き込む口舌も、許容量を超えてきらびやかな環境も、このところ私はものともしないで受け入れるようになっていた。


 恋愛は単身では成立しない。
 分かっているはずなのに、私はつばきさんの手に生み出された結晶を持ち歩いている間、誰に評価されるのでもない、彼女と繋がっているだけの存在になれる。



「あ、……」


 私は、開放感溢れるコスメショップの店先に足を止めた。


「すみません、こちらの什器、もう少し中に引っ込めていただくことは出来ますか?」

「え?あぁ」


 見慣れない顔の従業員は、私の姿を認めるや、慌てた様子で店内に視線を巡らせた。

 事務員は所属が判りづらい。首から下げた入館証が、初めて私を説明する。


 目新しい女の子の合図に応えて、駆けてきたのは優川さんだ。安堵と同時に、申し訳なさが押し寄せる。


「ごめんなさい、すぐ直します」

「いえ、こちらこそ……」

「規則ですから。今朝の納品が思っていた以上に多くて、なんて、言い訳は出来ませんもんね」

「有り難うございます……」


 発泡スチロールのパネルは細腕の女性達でも、一人で運べる重量だ。ただしサイズがある分、二人がかりで動かしている現場を見ると、やはりいたたまれなくなった。


 サービス業は大変だとつくづく思う。お客さんの質問、要求、時にはクレーム。商品の管理もあるし、予期しない自体がいつ起こり得るかも分からない、まさしくナマモノの業務だ。私の抱えてきたものなど所詮は独りよがりの些細な忿怒で、彼女らにしてみれば却って理解し難いほど抹消的かも知れない。

 今更そう思えるようになったのは、やはりバッグに潜ませている薬のせいか。私をあらゆるものから保護する、密やかな宝石。
/135ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ