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華の王妃
第9章 アンリア

王が用意させた馬車は大きな箱型で馬は4頭繋がれている。
頑丈な造りで内部に至っては座り心地の良い椅子に
絹張のクッションが敷き詰められ馬車の振動が伝わらないように
工夫されている。


王弟の屋敷は王都にある為短い旅程であるものの
石造りで整備された城下や賑やかで活気のある街並みは
リンダリアには新鮮に映るらしく物珍し気に馬車中から
外を見つめている。



「偶にはこういうのも良いでしょう。前回は王もいて
こんな風に寛いでと言うわけにはいきませんでしたからね。」


馬車の中で始終リンダリアの衣装の中に手を入れてくる好色な王の顔を
思い浮かべているのだろうか。


不快気な顔をしだす王妃にユリウスは可笑しそうに笑うと
侍女から予め用意させた籠の蓋を開け王妃の前に差し出した。


籠の中には小さく切ったパンや焼き菓子が綺麗に並んでいた。


「こういう時に食する物は美味しく感じるものですよ。
料理人が王妃様の為に朝一番で焼き上げたものです。」

侍女から差し出された布で手を拭うと王妃は子供ように
笑って小さなパンを手に取るとユリウスや侍女にも食べるように
勧めパンを口に入れた。


食欲があるのは良いことだ。
王妃の場合は精神や心の平安が左右するが。













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