この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
華の王妃
第9章 アンリア
「妃はおるか!」
突然の王の来訪は今に始まったことではないが今回は
いつもとは違うらしい。
背後にユリウスと女官長を従えた王は居間で寛いでいた
リンダリアの許へ急ぎ足でやって来るとすぐに
離宮から出るように言い放つ。
いったい何事かと恐ろし気に震える侍女たちとは反対に
リンダリアは不思議そうに首を傾げ王の顔を見る。
愛しい妃の愛らしい仕草にことの重大事を一瞬忘れてしまった王は
ぎゅっと身重の身体を抱きしめるとこのまま寝所へ行きたい
衝動に駆られるが背後で軽く咳払いをする女官長が視界に入ると
妃にすぐにでも王弟の屋敷へと非難するように命じる。
「何事でございますか。」
いつになく慌ただしい王の様子に問い返す妃を王はそのまま
抱き上げると中庭に用意させた馬車に妃を乗せる。
「一刻の猶予もならん。しばらくは王弟の屋敷へ行け。
屋敷は頑丈だし警護に屈強の騎士と付ける。
何も心配するな。産み月には俺も行くから。」
そう告げると妃の唇にそっと自身の唇を重ねた。