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華の王妃
第9章 アンリア

ああするしかなかった。
尊い命を救うには。
こうするしかなかった。
姫君の心を救うには。
「お腹は苦しくはないですか?ゆっくりとした
つもりでしたが、貴方と二人きりでこうするのは
久方ぶりだったので、あまり加減が出来なかったかも
知れません。」
未だに息の整わないリンダリアを心配気に気遣う姿は
とてもあの王の実弟とは思えぬほど繊細で美しい容姿だ。
まだ少年だと言うのに大人ぶろうとするのは
お腹にいる御子を気遣ってのことだろう。
紛れもなく王ではなく王弟の御子。
王妃の地位を盤石にする為に嫌がる王妃を説き伏せ
身籠らせた御子だった。
「冷やしたら大変だ。」
丁寧に後始末を終えると夜着をリンダリアに着せ
上掛けを掛ける。
そっと大きな腹に手を置けば腹の御子が元気よく
動いているのがわかる。
「大切な我が子。元気で活発なようだ。」
「よく動きますの。近頃は横向きで眠らないと
苦しいのですわ。」
「ユリウスは順調と申していたが・・」
心配気な王弟にリンダリアは美しい笑みを向けると
「今回は順調に育っておりますから。心配なさいますな。」
「姫・・・ 」
「リンダと、リンダとお呼び下さい。真実お子達の父なのですから。」
「リ、リンダ・・」
王弟は頬を赤く染めると嬉しそうにリンダリアの肩を抱き寄せる。
「ああ、本当に夢のようです。貴方と愛し合いその上御子まで
授かるなんて・・これも神が定めたもうた運命なのでしょうか・・」
「貴方・・・ 」
「しかもこうして貴方と水入らずで至福の時を過ごすことが
出来るなんて・・ユリウスには感謝しても足りないくらいです。」
「私も・・窮屈なあそこにいるよりもここで過ごす方が
気楽で楽しゅうございます。出来ればずっと貴方と
御子と3人で暮らしたいと思うのは我儘でしょうか。」
上目遣いに王弟を見上げるリンダリアの姿は愛らしく
王弟は思わず顔中に口づけの雨を降らせる。

