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華の王妃
第1章 プロローグ
「まだ生まれぬか!?」
夜中から始まった出産は昼間となった今も終わる気配はない。
慣例の朝議を大臣たちに任せ産所の隣室にいたアトラスはイライラした
様子で女官に問う。
産み月までまだ間があるからと嫌がる身重の妃を昨夜まで抱いていた王は
突然苦しみだした妃を思い離宮にそのままとどまっていたが、さすがに時間が
たち過ぎると思ったのか声に焦りが含まれてくる。
「初産は時間がかかりますゆえ・・もう少しかかるとユリウス殿が申しておりました。」
「ユリウスがついておる。まさかということはあるまいが・・万が一のことあれば
かねてから命じていた通り姫の生命を優先させよ。」
「かしこまりました。」
一礼して下がる女官を視界から外すと杯に残っていた酒を一息に飲み干した。
(ようやっと手に入れた姫を出産などで奪われてなるものか。)
略奪までし奪ってきた少女はアトラスの子をその身に宿してから少しづつだが
笑みを浮かべるまでになったのだ。
(俺だけの愛しい姫よ・・・)