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華の王妃
第4章 ユリウス
ユリウスは用意していた水盥と清潔な布を持ち天幕へと入ると
震える声で泣く姫の側へと近づいた。
足音を立てたつもりはなかったが気配でわかったのだろう。
怯えた目でユリウスを見つめる姫の姿があった。
「私は王宮医官のユリウスと申します。姫君が意識のない間、お世話を
させて頂きましたので初めてではございませんが。姫君におかせられましては
初めてでございますね。」
上掛けを握りしめガタガタと震えている。
乱れた髪やところどころに散らばるうっ血の痕を見れば王は相当堪えきれなかった
ようだ。
「ご安心ください。私は宦官でございます。」
「宦官・・・ ?」
「おや、ご存じありませんか?宦官とは男性でなくなった男を指すのですよ。
主に後宮でお仕えする為に存在するのです。
国へ入ればお世話する女官が参事ましょうが。今は旅先でお世話するものが
私しかいないのです。決して無体な真似は致しません。
姫君さえ受け入れて下されば女官と同じようにお世話をさせて頂きます。」
女のような美しい容貌が功を奏したのか、それとも安心したのだろうか。
姫は子供のように声をあげて泣き出した。