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華の王妃
第5章 王弟
13歳になったばかりの王弟は兄王に匿われるようにして連れて来られた
リンダリアを初めて見た時から、その美しく愛らしい姿が目に焼き付き、
離宮にこっそりと忍んでは遠くからその姿を眺めては良くわからない
思いに胸を痛ませていた。
それが恋だと気づいたのはユリウスが忍んで来るナリエスに気づき始めた頃だろうか。
泣いてばかりいたリンダリアの為にこっそりと楽の音を奏でて欲しいと
懇願されて対面したのがきっかけだった。
兄王が珍しく後宮の女に足を向けている夜のことだった。
華奢な身体が一層か細くなり、憂いに満ちた美しいリンダリアを見て
ナリエスはどうしようもない衝動に駆られた。
静かに楽の音を聞いていたリンダリアは時折故国を思い出すのだろう
はらはらと涙を零しては宦官のユリウスが涙を拭っていた。
夜も更けたせいなのか女官が一人もいないことに不思議な気がしたが
宦官も女官同様に側近くに仕える為にいる存在だ。
医官と言う立場にいながらも兄王の信頼厚いユリウスは未だこの国に
慣れず女官達に馴染まないリンダリアの為に側近くに仕えることを
許したのだと言う。
兄王が長年望んでいた姫は匿うようにして連れて来られた。
後宮に入りたがらない姫の為に離宮に手を入れさせこの上もないほど
寵愛し大切にしている。
兄王は戦好きで残虐非道な人間だが王として領土を広げ国を豊かに
することに心血を注いでいた。
気に入った人間には寛大な部分もあり、優秀な人材ならば貴賤を問わず
登用し引き立ててやったりもする。
女好きで後宮も賑やかだが特別な地位を与えている女はおらず
唯一の妃はリンダリアだけであった。