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華の王妃
第5章 王弟
人として許されるべきことではないものの、強者が欲しいものを
力づくで奪うことはさして珍しいことではない。
奪われれば従い強者に従順にならなければ生きる術もないのが女の性だ。
姫君とて例外ではないだろう。
兄王は強引に匿った姫君をこの上もなく大切にしている。
離宮に大勢の女官を付け豪奢な衣に宝石を惜しげもなく与えていると聞く。
大国の王にこれほどまで愛され大切にされ、女としてこの上もなく
幸せではないのだろうか。
王の夜をほぼ一人で独占し身籠るのも時間の問題と言われている。
今の境遇に何の不満があるのだろうか。
年若いナリエスには理解しがたいことだった。
「何がそのように悲しいのでしょうか?」
気が付いたらリンダリアに問うていた。
今思い返せばリンダリアの気持ちも考えない思いやりのない言葉だったと思う。
高貴な者にありがちな驕りがあったのかも知れない。
一瞬ナリエスを見て目を見開かせたものの、すぐに何かを堪えるかのように
きゅっと唇を結び涙を流すリンダリアにナリエスは思わず手を伸ばしてしまった。