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華の王妃
第8章 女官長
王との濃厚な夜は毎夜のように続いた。
「さあ今のうちにお召し上がり下さいませ。」
目の前に所狭しと並べられた豪勢な料理を前にリンダリアはげんなりとしながら
何事もきちんとしなければ気が済まない女官長マールを前に困った顔をする。
一晩中リンダリアを離さない王も朝になれば名残惜し気に政務へと出かける。
離宮は王宮から少し離れている為、早朝には馬を駆けて戻って行く。
激しい情事の後、寝台でぐったりとしているリンダリアを起こすことはせず
手早く身支度を済ませて戻って行く王の後ろ姿をリンダリアでなく女官長が
見送るのが最近の慣習であった。
女官長マールは王の重臣の一人コストス大臣の娘だった。
母親は父の妾の一人で身分も低くそれほど寵愛が深いわけでもない。
幼い頃より小さな別宅で母と乳母、数人の召使だけと言う貴族にしては
慎ましい暮らしで育った。
表向きは大臣の3女に当たるが華やかな美貌もなく後ろ盾も無い。
だが大臣はマールにきちんとした教育をほどこしそれなりに将来を
考えてくれているくらいには良い父親だった。
数多くいる正妻の子たちとは差がつくがおかげでマールは賢く教養のある
姫として育った。
さして美しくもない妾腹の娘には誰かに縁づくよりも女官として王宮に上がる
方が良いと考えたのか父親はマールを嫁がせずことはせず女官の一人として
王宮に上がることになった。