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雨 音
第1章 記憶

「あ、すいませ~ん!開けてください~~!」

そんな声が聞こえて慌てて『開ける』ボタンを押すと見慣れた姿の女性が乗り込んできた。

「ありがとうござ…あ、雫さんっ!」

やっぱり。
噂をすれば…

「おはよう。丁度今絵里ちゃんの話してたのよ」
「えっ!なんですか?可愛いって?照れちゃうなぁ!」

明るい元気な子でこんなことを言っても嫌味に聞こえない本当にいい子だ。
絵里ちゃんの教育係をやっていたけど、仕事の呑み込みも早くて驚いたのを覚えている。

「ミーハーだって。」
「えぇ!何でですかぁぁ!」

ぷく、と可愛らしく頬を膨らませる絵里ちゃんを見て少し笑ってごめん、という。

「今日からくる新しい部長の話。」

そういうと、ぽん、と自分の手のひらをポンと叩いて『あぁ!』と声を上げる。

「さっきチラッと見ちゃったんですけど、ちょーイケメンですよ~」

そういう絵里ちゃんの目は完全にハートになっている。

「…あれ?絵里ちゃんって彼氏いなかったっけ?」

前に大学時代から5年間付き合っているという話を聞いたことがあったような…。

「…そうなんですけどね。最近なんかそっけなくて…。」

もう私のことなんて飽きちゃったんですかね、なんて笑いながら言う。


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