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雨 音
第1章 記憶

「…っ」

目が合ってはっと意識が戻る。

「ほんとは、降りようと思ってたんですけど、その、間違えちゃって」

慌てて説明すると、あぁ、と笑ってエレベーターに乗ってきた。

「ありますよね、そういう事。」

クスクスと笑われるけど、別に感じが悪い感じじゃなくて…むしろ心地よさまで感じてしまう。
そんなことを考えてる自分を頭を振って追い出す。

「大丈夫ですか?」
「…すいません。」
「ふは、面白いですね、葉瀬 雫さん?」

いきなり名前を呼ばれて驚いて相手の目を凝視する。

「そんなに見られたら穴あきますよ」

そういってまた笑う。

よく笑う人だな、なんて思いながら視線を外した。

ばれないように胸に手を置いてみる。
…うん。ドキドキしてない。大丈夫。

さっきのは今までにないくらいのイケメンに出会ってしまって驚いただけ。
きっとそう。


ちん、と音が鳴って"失礼します"と行ってエレベーターを降りていく。

あ。なんで名前知ってるのか聞き忘れた。
…ま、いっか。

なんてのんきに考えながら私は資料を取りに行った。


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