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サイレントエモーショナルサマー
第8章 燃ゆる
「あんた見てたら私はセックスより心の安定だなって思ったんだよね。不思議なの、彼と会ってると心が穏やかになる」
「私と会ってるときは?」
「志保の未来が不安で心がざわつく」
「それはそれは申し訳ない」
「で、あんたはどうなの?藤くんとはその後」
「相変わらずだね…藤くんが自分のパンツ穿かせたがるのに戸惑ってるくらい」
煙草に火を点けながら言うとチカはぶっとアイスティーを吹き出した。きたないなぁ、と紙ナプキンを渡すと鋭い視線で睨まれる。
「お盛んなのはいいけどさ、あんたちゃんと藤くんの良いところ探してあげてんの?」
「あー、えっと、キスがいい」
「それは前に聞いた」
「あと、持続力と…えっと、手もいいよ。ああ、そうだお尻も小さくて…」
「あんたぶっ飛ばされたいの?」
「ごめんって、怒んないで。その拳おろしてください」
私から紙ナプキンを受け取った手はぶち込まれたらとても痛そうな拳に変化した。痛みを伴うセックスは好きだが、チカに殴られるのは遠慮したい。
「……よく分かんないけど彼は私を孤独から救いたいらしい」
藤くんの言葉が頭の中で甦る。私が自分を救ってくれたから、今度は私にそれを返したい、と言った彼の顔には靄がかかって上手く思い出せない。
「孤独、ね。まあ的を得てるよね。志保は孤独で寂しいからセックスしたいんだよ」
「え、そうなの?」
「あんたのことでしょーが。私に聞くな」
「自分の深層心理なんかに関心持ったことないよ。ただ私はセックスしたいの」
チカから視線を逸らし気まずさを誤魔化すようにぱっぱと煙草を吸った。
「愛して、愛されるのが恐いのはあいつの所為?それともあの人?」