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サイレントエモーショナルサマー
第10章 強制エンカウント

「おい」

発信ボタンを押す寸前に右手を強く引かれる。息を乱し、私を見下ろす冷たい視線。悲しくも美しいアンバー。ああ、そうか、私が藤くんの目に見つめられると弱いのはこの人と同じ色だからだ。

「お前やっぱ犯されてえんだろ。こんなとこ逃げ込まなくたって犯してやるのによ」
「ちがっ…!離して!」

手首の骨が折れるかと思った。手から離れたスマホが地面に落ちるが、拾い上げることも許されず、ずるずると引きずられた。彼は迷いなく公園の隅の多目的トイレへと進んでいく。

逃げる場所を間違えたのだと思ってももう遅い。足に力を入れて抵抗するが彼の力には敵わない。

「志保、いい女になったな。後姿でも分かったわ。犯されたくてたまらねえって書いてある」

多目的トイレの汚れた床に私を突き飛ばし鍵をかけてにやりと笑う。服や手が汚れるだなんて考えている暇はなかった。放り出された鞄を拾い上げる余裕もない。狭い場所で距離を取るべく倒れた姿勢から無我夢中で背を向け起き上がる。

「ああ、バック好きだもんな。痛い痛いって泣きながら締めてたよな」
「バカじゃないの!大声出してやるから」
「出せよ。集まったやつの前でぐちゃぐちゃに犯してやるから。お前結局気持ちイイって泣くんだろ」
「やだ…!やめて!」
「黙れ」

逃げる私の上半身を壁に押し付け、あっという間に後ろ手に手首を縛りあげる。多分ネクタイだ。いやだいやだと暴れても片手で抑え込まれた上半身はびくともしない。

「なんだよ、これ」

ガウチョを引き摺り下して、低い声が言う。

「なに、お前の今の男、自分のパンツお前に穿かせてんの?それともお前の趣味?」
「うるさい…!離してってば!」
「まーどうでもいいや。どうせ脱がせるし」
「やめて…!やめてよ!」
「…うわ、パイパンかよ。俺でもそこまでしなかったのに」
「言うなバカ!」

下着をずりさげ、丸出しになった股間に触れながらの溜息交じりの言葉。羞恥で頬が紅潮する。ベルトを外す音と布擦れの音が聞こえ背筋がさっと冷たくなった。
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