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サイレントエモーショナルサマー
第2章 6月某日金曜日
◇◆
藤くんのような女に不自由しなさそうな人のセックスは大抵淡泊だ。容姿だけで女が寄ってくるのだ技術など身につける必要がない。
おざなりな前戯に早急な挿入。分かりやすくあんあん喘いで相手のピークに合わせてぎゅっと膣を締めてやれば満足することだろう。
加えて彼らのような男は一度セックスをした女にはそれほど執着しない。どんな女を落とすかよりも、どれだけの女を喰ったかに重きを置いている。
私がこんなことを考えているとは露程も知らぬのだろう。私の手を握って微笑む横顔は狩りの成功を確信した顔のように見える。
シティホテルか、ラブホテルか。恐らくタクシーの行先は安いラブホテル街の筈だ。決めつけて目を伏せる。10分ほど経ってタクシーが停まったのはありふれた3階建てのアパートの前だった。これは予想外。
「当てが外れたって顔してますね」
「い、いや…そんなことは、」
嫌な予感。行きましょ、と手を引く力に背筋が冷たくなる。まずい。私は彼を見誤っていたのかもしれない。この、嫌な予感が当たっていたと分かるまでそう時間はかからないことをこの時の私は知らない。