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サイレントエモーショナルサマー
第11章 平穏か、あるいは、
それでも、当時の私は晶が好きだった。晶さえいれば良かった。晶だけが私の希望だった。晶と結婚して、晶以外を知らずに生きていくのだと思っていた。彼に言われた通り、晶の言うことを聞かなければひとりぼっちになってしまうと本気で思っていたのだ。
そんな生活をしていく内に晶はダーツバーの出勤日数を減らすようになっていた。私が就職活動をし始めた頃だ。
晶は私が支えなければ。ふたりで暮らすこのアパートを守らなければ、と死にもの狂いになって大手企業の内定を貰った。そのお祝いにと晶が見慣れないシャンパンを買ってきて、ふたりでそれを飲んでやっぱりセックスをした。
― 私、来年から社会人になるよ。ね、私の両親は学生結婚だったの。私も学生の内にあなたと結婚したい、晶とずっと一緒に居たいの
大学4年の6月。誕生日が近くなった頃だった。その前からちらほらと結婚したいとは口にしていた。その時はもう一度言っておけば、彼が誕生日プレゼントにエンゲージリングを贈ってくれやしないかと期待していたのだと思う。
次の日、晶は私が大学へ行っている間に荷物を纏めて出ていき、二度と帰ってはこなかった。