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サイレントエモーショナルサマー
第11章 平穏か、あるいは、
◇◆
ミヤコちゃんを筆頭に彼女の一期上の女の子と、一年目の総務の女の子に連れられやってきたのは金沢の名産品や日本酒を楽しめる洒落た居酒屋だった。客単価もそれなりに高く設定されている渋い店を選ぶとは意外だ。
カシスオレンジがなかったので梅酒のソーダ割りをちみちみと飲みながらミヤコちゃんたちの会話に耳を傾ける。最初は一年目の女の子、成瀬さんが会社に慣れたかという話だったが、いつの間にか色恋の話になっていた。
「…付き合って一年になるのにキスもしてくれないんですよ、私って愛されてないんですかね」
豪快に生ビールを飲みながらミヤコちゃんの一期上の女の子、森さんが言う。
「大事にされてるってことじゃないですか?ね、都筑さん」
「あ、うん…そうね、そうかも」
ミヤコちゃんにふられ、苦笑いで答えた。こういう恋バナらしきものはここ数年なかったので返答に困る。
「都筑さんと中原さんってどんなキスするんですか?」
「え!?いや、浩志とは付き合ってるとかじゃないししないよ」
「付き合ってないんですか?あんなに仲良いのに?じゃ、あたし中原さんにアプローチしてもいいですかね?タイプなんですよ」
森さんに爆弾を放られ、たじろぐと今度は成瀬さんが眼を爛々と輝かせ私に迫ってくる。
「い、いいんじゃないかな。浩志は良い奴だよ。美味しいお店もたくさん知ってるし」
「あれ?成瀬ちゃん、藤のことかっこいいって言ってなかった?」
「藤さんは確かにちょうかっこいいです。もう、王子様って感じで」
「分かる!藤くんってまさに王子様だよね。見てるだけでうっとりしちゃう」
…出た。藤くんはアイドルどころか王子様に昇進されているらしい。彼もご自分で、俺結構モテるんです、と言っていた通り藤くんのモテモテっぷりは健在である。
「都筑さんはどう思います?藤のこと」
さりげなくおかわりを注文しつつミヤコちゃんは私に問う。そんなもの正直に答えられるわけがないだろう。
「いい子だよね。こう、素直って言うか?」
股間とキスがたまらん、とは言うまい。
「藤さんって指、めっちゃ長いですよね。なんかエッチくないですか?」
そうなんだよ、藤くんの指は綺麗に長くてエロいんだよ。でも、そこだけじゃないよ。成瀬さんの発言にそわそわしながらグラスに口をつける。