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サイレントエモーショナルサマー
第2章 6月某日金曜日
灰皿もライターもない。室内は爽やかな匂いでいっぱいで、煙草の匂いなんて全くしない。なんで、彼がこんなものを。
物音に気付き、煙草の箱を元の場所に戻した。ドアが開き、バスタオルを腰に巻いて上半身裸の彼が姿を現す。程よく白い肌。綺麗な腹斜筋。触れたい。
「物欲しそうな顔してますね」
そう言って、私を立たせるとまたキスをくれる。素肌に指を滑らせて藤くんの顔を見上げる。
「そんなに触られたら俺、我慢できなくなりますよ」
「おっとっと…じゃ、シャワー借りるね」
背伸びをして藤くんの頬にキスをする。いってらっしゃい、の声を背に受けながらシャワーを浴びるべく風呂場へと向かった。
物の少ない狭い浴室。まだ微かに熱気とボディソープの香りが残っている。服を脱いで下着に触れてみると悲惨な有様。なんてどうしようもない女。ただの後輩と言い続けた彼と一線を越えるということに興奮しているのだ。
バスタオルだけを巻いてシャワーから出るとさっきまで煌々と点いていた居室の電気は消され、間接照明だけがほんのりと灯っている。
ベッドに腰掛けていた藤くんと目が合う。綺麗な顔。おいで、と私を誘う低い声。そんな声を出すなんて知らなかった。そっとそっと近づいて手を伸ばす。力強く引かれ、ベッドに倒れ込む。