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サイレントエモーショナルサマー
第13章 confusione
◇◆
「え、それさ、もう付き合ってるよね?そうだよね?週の大半は藤くんと一緒なんでしょ?言葉がないだけじゃん。あんたそのまま落ち着きな。なんなら婚姻届書くといい」
チカの勢いにたじろぐ。木、金、土、と三日続いた大雨が嘘だったかのようにからりと晴れた暑い日だ。通販で取り寄せたという手土産のシャーベットはチカが我が城に持ってきてくれた時点でどろっどろに溶けていた。
煙草を吸いつつ、アイスコーヒーを時折飲みながら昨日までの話をした私にチカはなにやら興奮した様子だ。落ち着きなさいよ、とアイスティーを勧め、リモコンに手を伸ばす。
「……違うもん。藤くんとはセフレだもん。外食しないし」
「そこ?あんたの頭どうなってんの?もう私には理解不能なんだけど」
テレビを点けたのにチカは私の手からリモコンを奪い取って、テレビを消した。なにすんの、と顔を見るがぎらついた目が私を見ていて、またもたじろぐ。
「なにがそんなに嫌なの?藤くんのこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。キスしたいなーって思うし、セックスしたいし、出来なくても家行きたいなって初めて思ったし。でも、それが好きって感情なのかって言われると物凄く自信がない」
「うーわ、めんどくさ。あーほんと、経験値ない奴は」
乱暴にアイスティーを飲み干すと、おかわりとグラスを突きつけてくる。受け取ってソファーから立ち上がった。キッチンでおかわりを注ぎながらちらっと冷凍庫のシャーベットを確認するがまだ食べられそうにない。
「私の恋愛的な好きってなんかおかしいじゃん。あの頃、好きだって思ってた晶も相変わらずのやつだったし。その後もこう…上手くいかなかったし」
「…は?あんた、晶に会ったの?」
クッキーの缶を引っ張りだして、ソファーへと戻る。私の言葉にチカの眉がつり上がった。
「うん、会った。火曜…?だったかな」
「なんか喋った?まさかヤったの?」
「……ははは」
「ヤっちゃってんのか…あんたってほんと…いや、いい、あ、私そのココナッツのやつ食べたい」
好きなだけどうぞ、と勧めて煙草を咥える。ライターが上手く点かず苛立って放り出してから立ち上がる。確かどこかに残っていた筈だ。引き出しを物色しながら口を開く。