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サイレントエモーショナルサマー
第14章 fantasma
「ん…!」
噛みつくようなキスだった。驚愕で目を見開く。街中で、しかもまだ会社からそう離れていないというのになにをする。晶の身体を突き飛ばし、頬を叩いた。手のひらが熱く、痛みを覚える。
「あの頃より犯し甲斐ある顔しやがって」
してねーよ。苛々させるな。本気で警察署に突き出すぞ。
「……三井」
「は?」
「三井、直希。知ってるだろ」
「なんで…晶がその名前…」
「偶然知り合った。知ってるか?三井はいまも、」
「辞めて」
どうりでしつこいと思ったらまだこんな隠し玉を持っていたのか。声を震わせ、狼狽える私に気付いて晶がにやりと笑う。どうやらその名前で私がどこまで動揺するか分かりきっていた訳ではないらしい。
「その顔、会社の連中より三井に昔のこと話される方が嫌って顔だな」
「話すならあんたのその口縫い合わせてやる」
「お前が大人しく俺の言うこと聞くっつーなら話さねえよ」
きつく晶を睨み付ける。思考回路が理解できない。明日以降であれば厭わないと言っているのに何故、そこまで今日に拘るのか。藤くんが私を待っていてくれているのだ。早くあのあたたかな部屋に行きたいのに。
「乗れ、志保」
気付けばタクシーが扉を開いて待っている。晶が先に乗れば隙をついて逃げられる。だが、それを察してか晶は私の背後に立って膝裏を蹴った。鞄の中でスマホが鳴動しているのを感じながらタクシーに乗り込んだ。
*
「おい、風呂」
ラブホテルの一室に私を押し込むなり、ソファーに深く沈んで言う。なんだそれ、お前は私の亭主か。煙草を吸い始める姿を見ながら舌打ちをかまして渋々ガラス張りの浴室へと入り込む。そう言えば、晶とラブホテルに入ったのは初めてだ。
噛みつくようなキスだった。驚愕で目を見開く。街中で、しかもまだ会社からそう離れていないというのになにをする。晶の身体を突き飛ばし、頬を叩いた。手のひらが熱く、痛みを覚える。
「あの頃より犯し甲斐ある顔しやがって」
してねーよ。苛々させるな。本気で警察署に突き出すぞ。
「……三井」
「は?」
「三井、直希。知ってるだろ」
「なんで…晶がその名前…」
「偶然知り合った。知ってるか?三井はいまも、」
「辞めて」
どうりでしつこいと思ったらまだこんな隠し玉を持っていたのか。声を震わせ、狼狽える私に気付いて晶がにやりと笑う。どうやらその名前で私がどこまで動揺するか分かりきっていた訳ではないらしい。
「その顔、会社の連中より三井に昔のこと話される方が嫌って顔だな」
「話すならあんたのその口縫い合わせてやる」
「お前が大人しく俺の言うこと聞くっつーなら話さねえよ」
きつく晶を睨み付ける。思考回路が理解できない。明日以降であれば厭わないと言っているのに何故、そこまで今日に拘るのか。藤くんが私を待っていてくれているのだ。早くあのあたたかな部屋に行きたいのに。
「乗れ、志保」
気付けばタクシーが扉を開いて待っている。晶が先に乗れば隙をついて逃げられる。だが、それを察してか晶は私の背後に立って膝裏を蹴った。鞄の中でスマホが鳴動しているのを感じながらタクシーに乗り込んだ。
*
「おい、風呂」
ラブホテルの一室に私を押し込むなり、ソファーに深く沈んで言う。なんだそれ、お前は私の亭主か。煙草を吸い始める姿を見ながら舌打ちをかまして渋々ガラス張りの浴室へと入り込む。そう言えば、晶とラブホテルに入ったのは初めてだ。