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サイレントエモーショナルサマー
第15章 glicine
「俺ね、最近見てて思ったんですよ。あ、中原さんは志保さんに手出さないなって。だからって志保さんが中原さんと休日に出かけるってのは面白くないです」
「セックスしないのに?」
「セックスなしで志保さんを繋ぎとめてる中原さんが羨ましいんです」
「…?私は別に浩志に繋ぎとめられてる訳じゃないよ?」
「………なんで、志保さんってその辺鈍いんですかね」

また、藤くんは訳の分からないことを言う。首を傾げると、ちゅ、と頬に唇が触れた。欲しいのはそこじゃない。そんな意を込めて藤くんのポロシャツの裾を引く。

「キス、したいですか」
「…うん」
「なら、土曜日、映画の後うちに来てください。何時でもいいです」
「に、日曜でどうかな?」
「土曜じゃなきゃダメです」
「わ、わかった…解散したら連絡する」
「約束ですよ。朝も言いましたけど、すっぽかしナシですよ」
「うん、わかった。ちゃんと連絡する」

私の返事で藤くんが微笑む。目を閉じて、キスを待った。触れる熱を貪って、藤くんの二の腕を掴んだ。しなやかなのに逞しい腕。私を軽々と抱き上げるその腕が、私の中の安堵感を増してくれる。

「今夜は志保さんの時間、俺にくれますよね?」
「朝まであげる」
「5時までですか?」
「ギリギリまで。明日の分の服、持ってきてたり?」
「…!やべ、ちょっと…離れてください」

みるみる紅潮する頬がなんだかおかしい。お、耳まで赤くなっている。今夜は激しい夜になりそうだ。
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