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サイレントエモーショナルサマー
第16章 falco pellegrino
「きょ、今日は家に帰るからね」
「どうして?」
「どうしてって…だって、明日会うでしょう。ちゃんと連絡するよ」
「朝までセックスできるの金曜だけじゃないですか」
「……それは、そうだけども」
「金曜の夜の志保さんはね、もうやだって泣きながら俺のを離したくないって締め付けるんですよ」
「くっ…グノーシス文書強力だな…そんなこと思い出してるくせに平気な顔して!」
「教えてあげたら志保さんの尻軽も治りますかね」
「………治らないだろうね」
「…今すぐどうにかしろとは言いませんけど、オイタが過ぎたら毛剃るだけで済ましませんからね」
「………はい」

変な子だ。独占欲を微塵も隠す気がないくせに、彼は私が他の男とセックスをすることを今すぐやめろとは言わない。それどころか身体の関係のない浩志との仲の方が気に入らないと言う。尻軽だとさり気なく罵りながらも私を手離す気はないらしい。

私みたいな恋慕もよく分からぬ女のいったいなにがそこまで良いというのか。救ったらしい彼のことなんて覚えてもいないのに。

思案に耽る私の頬に口付けて、藤くんは倉庫を出ていく。去り際に、明日はちゃんと連絡ください、と言ったからどうやら今日は私の帰宅を許すつもりのようだ。今夜は、上手く眠ることが出来るだろうか。
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