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サイレントエモーショナルサマー
第16章 falco pellegrino
「待って、隼人。それはやだ」
「なんで。元カノはこれしないとすげー機嫌悪くなったけど」
「私はなんないから大丈夫」
「あのさ、今日は俺がしーちゃんのこと好きって設定だろ。俺はあの巨乳の元カノとしてた通りにするから。嫌ならいつも通り縛ってバイブぶち込むけど」
「……わかった」
「身体の力抜いてさ、ここの毛剃った男の顔でも思い浮かべてなよ」

言われんでも頭の中では藤くんの顔やキスの快感が浮かんでいる。目を閉じると煙草臭い隼人の部屋ではなく、藤くんの部屋の光景が瞼の裏に映し出される。

そう言えば、藤くんはここを舐めることはしなかった。私がその行為を嫌っていることを知っていたのかもしれない。まだ、詳しく問い詰めてはいないが確実に彼は私の過去を知っている。

「んっ…」
「しーちゃん、ボディーソープなに使ってんの?俺も同じのにしよっかな」
「ちょ、そこで喋んないで…っ…」

ふ、とクリトリスに息が拭きかけられるとぞわぞわした感覚が背中から這い上がってくる。舌先でちょんと弾かれると肩が跳ねたのが分かった。ああ、もう、足を閉じたい。

セックスが好きな私でも、電マの次、あるいはそれ以上にクンニと言うやつが嫌いだ。刺激されれば気持ち良いとは思うものの、私を気持ち良くしてやりたい、イカせたい、という欲を感じると脳内には早く辞めてくればかりが浮かんで集中出来なくなる。

「ね、隼人…やっぱ、それ…」

隼人はなにを考えているのか私の足の間に顔をうずめて、舌先でクリトリスに触れたり触れなかったりしながら、指で入り口を撫でたりしている。

いっそ噛んでくれ。それで満足してくれないだろうか。

「んっ…」

隼人の舌が割れ目をなぞった。指にはない生温かさを感じる。中にはいれず、下から上へ、上から下へと、何度も往復させていく。

時折、唇で覆うように吸い付きながら、まだ舌は中に入ってこない。もどかしさというか、何とも言えない心地悪さで隼人の頭に手を伸ばすと、彼はその私の手の上に自分の手を重ねた。
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