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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
『へー、ふーん、そう。去る者追わない、追われれば逃げる志保ちゃんが去られるの嫌なの。へー』
チカは恐らくにやにやと笑っていることだろう。くそ、と思いながら煙草の箱に手を伸ばす。
「…藤くんってさ、なんか私のこと試してる気がするんだよね」
『試す?あんたのことなんか試してどうすんの?』
「いや、なんていうかさ、どこまですれば私が逃げるのか探ってる感じって言うの?私がどういうタイプか分かってて、今まで他の人にされたら逃げてきたようなこと求めつつ、嫌いだって知ってることはしない、みたいな」
『でも、藤くんにされても嫌じゃないんでしょ』
「…うん」
吸い込んだ煙をゆったりと吐き出す。藤くんは不思議だ。浩志の思考は手に取るようにわかることも多いのに、とにかく藤くんはなにを考えているのか分からない。私が口にする些細な言葉で喜んだり、顔を赤らめたりする。
独占欲も、情のあるセックスも、そんなものは求めてこなかった私が、それらをむき出しにする彼とは離れたがるどころか離れられなくなることを恐れている。
セックスは私にとって食事や睡眠と同程度の一作業でしかない。そこに愛情は不要だ。そう思っていた。その点にまだ大きな心境の変化は訪れていない。事実、予想外な方向に転がったとはいえ隼人とした普通のという設定のセックスでは藤くんとしている時のような恐くなる快感はやってこなかった。
「もう、考えるのめんどくさいわ…男ってほんとよく分からん」
『悩め悩め。他人に興味ない志保が人の感情に振り回されて悩んでる姿はかなり面白いよ』
「昨日隼人も似たようなこと言ってたんだけど…私が本質的に他人に全く興味ないって」
『あら。自覚なかった?あんたさ、懐に入れた人間には目かけて、情かけて、って出来るけどそうじゃない人間にはある意味凄く優しいし、ある意味凄く冷たいよ』
「なにそれ」
『私のこと懐に入れてくれてありがとうって意味』
「意味が分かりかねます」
『まー考えてごらんなさいよ。悩める志保は面白い。あ、私今日これからデートだから電話明日以降にしてね。じゃ』
「あ、ちょっと、」
チカは恐らくにやにやと笑っていることだろう。くそ、と思いながら煙草の箱に手を伸ばす。
「…藤くんってさ、なんか私のこと試してる気がするんだよね」
『試す?あんたのことなんか試してどうすんの?』
「いや、なんていうかさ、どこまですれば私が逃げるのか探ってる感じって言うの?私がどういうタイプか分かってて、今まで他の人にされたら逃げてきたようなこと求めつつ、嫌いだって知ってることはしない、みたいな」
『でも、藤くんにされても嫌じゃないんでしょ』
「…うん」
吸い込んだ煙をゆったりと吐き出す。藤くんは不思議だ。浩志の思考は手に取るようにわかることも多いのに、とにかく藤くんはなにを考えているのか分からない。私が口にする些細な言葉で喜んだり、顔を赤らめたりする。
独占欲も、情のあるセックスも、そんなものは求めてこなかった私が、それらをむき出しにする彼とは離れたがるどころか離れられなくなることを恐れている。
セックスは私にとって食事や睡眠と同程度の一作業でしかない。そこに愛情は不要だ。そう思っていた。その点にまだ大きな心境の変化は訪れていない。事実、予想外な方向に転がったとはいえ隼人とした普通のという設定のセックスでは藤くんとしている時のような恐くなる快感はやってこなかった。
「もう、考えるのめんどくさいわ…男ってほんとよく分からん」
『悩め悩め。他人に興味ない志保が人の感情に振り回されて悩んでる姿はかなり面白いよ』
「昨日隼人も似たようなこと言ってたんだけど…私が本質的に他人に全く興味ないって」
『あら。自覚なかった?あんたさ、懐に入れた人間には目かけて、情かけて、って出来るけどそうじゃない人間にはある意味凄く優しいし、ある意味凄く冷たいよ』
「なにそれ」
『私のこと懐に入れてくれてありがとうって意味』
「意味が分かりかねます」
『まー考えてごらんなさいよ。悩める志保は面白い。あ、私今日これからデートだから電話明日以降にしてね。じゃ』
「あ、ちょっと、」