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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
結局、藤くんの勢いに押され、スカートに合うような彼のTシャツを借りて、アパートを出た。目が眩むほど眩しい青空の下を並んで歩いていると藤くんの手が恐々と私の方へ伸びてくる。いきなり抱き着いて来たり、散々セックスをしてるのに変な子だな、と思いながらその手を取る。

「志保さん、これはデートですからね」
「散歩でしょ」
「散歩デートです」

酷使した足でヒールの高いサンダルは想像より歩きづらい。歩みの遅い私を気遣って、彼も歩幅を緩めてくれる。

「足、やっぱりしんどいですか」
「ん。でも、最初に藤くんとした時よりずっと平気」
「でしょうね。俺とするの慣れて来ただろうなって判断したんで昨日は箍を外した訳ですし」
「箍って自分で外すもんかな」
「昨日の俺の場合は」

なにそれ、と笑うと藤くんは躊躇なく私の頬にキスをする。君は、外国人か。藤くんのセックスはとにかく長い。1回だけでもかなりの時間を取るのに、2回、3回、と続いていくとなにがなんだか分からなくなってくる。平日の夜の彼は御経やらグノーシス文書やらのお力を借りてどうにか自分を抑え込んでいるらしく1回戦で眠らせてくれるが、休みの前日は長い上に激しくなる。

過去にもこんなことをしていたのかと疑問が脳裏を過ぎる。私は性欲が強く、藤くんのモノを受け入れることが出来るが、そうでない子からしたら藤くんとのセックスは拷問以外の何物でもないだろう。それとも、キスと指がイイからどうにかなっていたのだろうか。

「ね、言いたくなかったら答えなくてもいいけど、藤くん普通に女の子と付き合ってたことあるよね?学生の時とか。その時ってどうしてたの?ここまでしてた?」
「ここまでなんて出来ないですよ。そもそも全部入らないことの方が多いんで中々イケないんですよね、ただでさえ遅いのに。で、大体もういやだって言われて泣かれて、最終的にフラれるパターンですね」

大方想像通りの答えである。私がもし普通の感覚の女性だったとして、恋をして付き合って、いざ、となったときに藤くんのモノを見れば尻込みしただろう。いや、現に最初はちょっと尻込みしていた。私の場合初体験が藤くん級のモノをお持ちの晶であり、その後2年程あいつとセックスばかりしていたからなんとかなった訳だ。
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