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サイレントエモーショナルサマー
第17章 ricordo
愛情を知らされて、私は今のような状態になってから初めて畏怖以外の感情を覚えた。藤くんが真っ直ぐ私に言葉をぶつけてくれたことが、今は、嬉しくて堪らない。

魔法が解けたからだろうか。それとも藤くんの愛情が私が想像していたよりもずっと深く大きかったからか。

チーズケーキを食べて、美味しい、と微笑む顔を見るとまた胸の中に名のない熱が広がる。たまらず藤くんの頬へ手を伸ばした。そっと触れた唇はチーズケーキの味がする。

「あ、志保さん、ひとつ聞いて良いですか?」
「はい、どうぞ」
「もし、俺のが志保さんの御眼鏡に適ってなかったら今、この時間ってなかったと思います?」

アンバーに見つめられ、息を呑む。実に答えづらいことを聞いてくれるじゃないか。だが、私は嘘と言うものが嫌いだ。藤くんにはきっと正直に話しても平気だろう。

「…正直に申し上げますと、ないね。巨根に感謝だね」
「……可愛い顔してなんつー下品なことを、」
「そういう女だもん。藤くんが勝手に人のこと女神にしてるだけだよ」
「いいです、もう。俺の女神は淫乱で変態なんで。寧ろどっちかっていうとラッキーっちゃラッキーですから」

にんまり笑って私の身体に手を伸ばす。どきりとすると藤くんの顔が近づいて、唇が触れた。このキス魔め。咄嗟に藤くんのTシャツを掴めば、身体はあれよあれよという間にソファーに倒されていく。

「ちょ、え、なに?なんで押し倒してんの?ちょっと、」
「好きな人が、自分と同じくらい性欲あるってのはいいですね。最初は結構恐々だったんですよ、毎日したいとか言ったら流石に引くかな、とか。ほら、志保さんも俺となら毎日じゃなくていいって言ってたじゃないですか」
「ふ、藤くん?いや、君ちょっと異常だよ…毎日毎日あの長さは普通の子だったらそりゃふられるよ」
「志保さんだったら?志保さんが嫌なら俺は我慢できます。でも、志保さんが嫌じゃないなら我慢なんかしたくありません」
「嫌じゃないよ、嫌じゃないけどさ、…んっ」

渋ったところで、キスひとつで大人しくなるのを藤くんは悔しいくらい分かっている。何度も何度も啄まれ、彼の顔が離れれば、私は彼のTシャツを引いて、もっと、とねだってしまう。

「俺のキスと、俺のモノだったらどっちが好きですか?」
「くっ…どっちも、」
「じゃ、俺のことは?」
「…それは、まだ」
「この先は?」
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