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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
流石に私でも空気がピリついたことが分かる。藤くんはにっこり笑顔だが、私とふたりきりになろうとするのを阻む浩志が相当気に入らないらしい。嫌な予感のする笑顔。漸く学んできたところだ。
浩志は浩志でなにやら意味の分からない発言をしながら青筋を震わせている。最近、手に取るように分かっていた浩志の思考がよく分からないことがままある。
「あのね、君たちね、勤務中ですからね。落ち着こうね、ね」
はいはい、と諭す私に他の社員たちは、あいつらまたやってる、くらいの非常に冷ややかな視線を送ってくる。いや、待て。見てないで藤くんを引き取ってくれ。
「しょ、暑気払いの料理ならもう頼むとこ決めたし、買い出しは金曜とあと1日どっか取れば大丈夫だから。ね、藤くん、はい、仕事に戻りましょう。お茶ありがとう」
思わず立ち上がって藤くんの背中を押した。ここのところ浩志は藤くんが絡むと機嫌が急降下する訳で、私としてはいち早く藤くんをデスクに戻したい。
ぐいぐい背中を押す私の様が愉快なのか、藤くんが歩きながら体重を預けてくる。舐めんなよ。そんな思いでばしんと背中を叩くと上手く決まったようで藤くんは小さく呻く。
「…今のは結構痛いです」
「喝をいれたの」
「ビンタよりキスがいいです」
「もう一発頬にいれてあげようか」
「あ、仕事。仕事しないと」
「ん。ちゃんとやって、村澤さんが見てるよ」
はーい、と背中をさすりながらデスクに戻っていく藤くんをみやって溜息をひとつ。ご機嫌な藤くんは私の手に負えない。家の中であれば別にかまわないが、会社でもあの調子じゃ先が思いやられる。
デスクに戻ると浩志は藤くんが淹れてくれたお茶を飲みながら渋い顔をしている。恐らくコーヒーの方が美味いとかそんなことを考えている顔だ。
「好みじゃない?」
「……コーヒーの方が美味い」
「だろうね、そういう顔してる。買ってこようか。昼から戻ってくるときギリギリで買えなかったし」
「ああ…いや、いい。お前忙しいだろ」
「大丈夫、大丈夫。私も飲みたいし、ちょっと行ってくるね。コンビニのでいい?」
「悪い。助かる」
浩志は浩志でなにやら意味の分からない発言をしながら青筋を震わせている。最近、手に取るように分かっていた浩志の思考がよく分からないことがままある。
「あのね、君たちね、勤務中ですからね。落ち着こうね、ね」
はいはい、と諭す私に他の社員たちは、あいつらまたやってる、くらいの非常に冷ややかな視線を送ってくる。いや、待て。見てないで藤くんを引き取ってくれ。
「しょ、暑気払いの料理ならもう頼むとこ決めたし、買い出しは金曜とあと1日どっか取れば大丈夫だから。ね、藤くん、はい、仕事に戻りましょう。お茶ありがとう」
思わず立ち上がって藤くんの背中を押した。ここのところ浩志は藤くんが絡むと機嫌が急降下する訳で、私としてはいち早く藤くんをデスクに戻したい。
ぐいぐい背中を押す私の様が愉快なのか、藤くんが歩きながら体重を預けてくる。舐めんなよ。そんな思いでばしんと背中を叩くと上手く決まったようで藤くんは小さく呻く。
「…今のは結構痛いです」
「喝をいれたの」
「ビンタよりキスがいいです」
「もう一発頬にいれてあげようか」
「あ、仕事。仕事しないと」
「ん。ちゃんとやって、村澤さんが見てるよ」
はーい、と背中をさすりながらデスクに戻っていく藤くんをみやって溜息をひとつ。ご機嫌な藤くんは私の手に負えない。家の中であれば別にかまわないが、会社でもあの調子じゃ先が思いやられる。
デスクに戻ると浩志は藤くんが淹れてくれたお茶を飲みながら渋い顔をしている。恐らくコーヒーの方が美味いとかそんなことを考えている顔だ。
「好みじゃない?」
「……コーヒーの方が美味い」
「だろうね、そういう顔してる。買ってこようか。昼から戻ってくるときギリギリで買えなかったし」
「ああ…いや、いい。お前忙しいだろ」
「大丈夫、大丈夫。私も飲みたいし、ちょっと行ってくるね。コンビニのでいい?」
「悪い。助かる」