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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
「お前分かってんな。分かってるくせに卵焼きも作れないダメな女だったよな」
「だから黙れっつってんでしょうが」
過去、卵焼きには数えきれないほど挑戦した。だが、何度やっても出来上がるのは焦げの塊だった。
「仲良いんですね、おふたり」
「そんなことありません」
あってたまるか。晶に対してこんな口をきけるようになったのは6年の歳月を経たからだ。その間、彼とは一度も顔を合わせなかった。
三井さんと付き合うという形になった時、私は彼に告げた。前に付き合っていた人との別れがトラウマで、男性の下心が苦手であるし、私はお付き合いというものに自信がない、と。
それでも、三井さんはゆっくり向き合っていきましょう、と言ってくれた。
休みの日には食事をしたり、買い物に行ったり、そうしながら優しかった頃の晶の姿が脳裏を過ぎることもあった。時間をかけて、日々のサイクルが出来上がっていった。平日は遅くまで仕事をして、休日には三井さんと出かける。サイクルが出来上がってからも三井さんは私に指一本触れなかった。彼は私をとても大切にしてくれた。
「志保、醤油」
「取ってください、くらい言ったらどうかな」
「口のチャック開いてやろうか」
「…はい、醤油」
夢見ていた晶は今、私を苛立たせる天才に進化を遂げている。くそ、と苛立って眉を顰めると三井さんはそっと笑った。
「その顔、本当に懐かしい。僕ね、あの頃、普段の都筑さんとのギャップがなんか嬉しかったんですよね。この顔知ってるのは僕だけかな、みたいな」
「このブサイクな面みてそんなこと言うのお前だけだろうな。あと、こいつはこの顔より、っていってーな!」
晶が余計なことを言うのを察してボトムス越しに晶の太腿を思いきり抓る。泣き顔が良いなんて言ってみろ、次は目玉に箸を突き刺してやる。そんな思いで睨み付けると私の殺気を感じたのか珍しく大人しくなって煙草を咥えた。
これまでの会話から思うに、晶は私が三井さんと交際していた、あるいは、三井さんが私に好意を寄せていたことは知っているようだ。
「だから黙れっつってんでしょうが」
過去、卵焼きには数えきれないほど挑戦した。だが、何度やっても出来上がるのは焦げの塊だった。
「仲良いんですね、おふたり」
「そんなことありません」
あってたまるか。晶に対してこんな口をきけるようになったのは6年の歳月を経たからだ。その間、彼とは一度も顔を合わせなかった。
三井さんと付き合うという形になった時、私は彼に告げた。前に付き合っていた人との別れがトラウマで、男性の下心が苦手であるし、私はお付き合いというものに自信がない、と。
それでも、三井さんはゆっくり向き合っていきましょう、と言ってくれた。
休みの日には食事をしたり、買い物に行ったり、そうしながら優しかった頃の晶の姿が脳裏を過ぎることもあった。時間をかけて、日々のサイクルが出来上がっていった。平日は遅くまで仕事をして、休日には三井さんと出かける。サイクルが出来上がってからも三井さんは私に指一本触れなかった。彼は私をとても大切にしてくれた。
「志保、醤油」
「取ってください、くらい言ったらどうかな」
「口のチャック開いてやろうか」
「…はい、醤油」
夢見ていた晶は今、私を苛立たせる天才に進化を遂げている。くそ、と苛立って眉を顰めると三井さんはそっと笑った。
「その顔、本当に懐かしい。僕ね、あの頃、普段の都筑さんとのギャップがなんか嬉しかったんですよね。この顔知ってるのは僕だけかな、みたいな」
「このブサイクな面みてそんなこと言うのお前だけだろうな。あと、こいつはこの顔より、っていってーな!」
晶が余計なことを言うのを察してボトムス越しに晶の太腿を思いきり抓る。泣き顔が良いなんて言ってみろ、次は目玉に箸を突き刺してやる。そんな思いで睨み付けると私の殺気を感じたのか珍しく大人しくなって煙草を咥えた。
これまでの会話から思うに、晶は私が三井さんと交際していた、あるいは、三井さんが私に好意を寄せていたことは知っているようだ。