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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
「…あの、ふたりはいつからお知り合いなんですかね」

凡そ接点のなさそうなふたりだ。晶は私の家を去るまで時たまダーツバーの仕事に行くフリーターであったし、三井さんは今でも会社を辞めて居なければ大手企業の社員である。そしてなにより三井さんに語ったトラウマの相手はこの晶だ。

「仕事の関係で偶然知り合って、2年くらい前ですかね、晶さん」
「ああ、そんなもんじゃね。そしたらなんか近所に住んでるし、釣り仲間みたいになって、で、今」
「釣り?あんた釣りなんかやってなかったでしょ。女か、女釣ってんのか。でも、この人釣った魚には餌やらないタイプの典型ですよ」
「…お前もうビール辞めとけよ」
「もういいよ、飲まないでやってられるかっての。煙草ちょうだい」
「都筑さんっていつからか結構飲むようになりましたよね。いい飲みっぷり今でも覚えてます」

このふたり近所に住んでるのかよ、とか晶がいつから魚釣りなんぞに目覚めたのか、と色々言いたいことはあったが、とりあえず残り少なくなっていたビールを喉に流し込み、すかさずおかわりを注文する。

今さらだ。今さらこのふたり相手にかわいこぶったって意味がない。晶に良く思われたいとも思わないし、三井さんには口の悪い私を知られている。

三井さんに対して外聞を厭わない姿を見せながら、私はいつも気を張っていた。身体に触れられるのが嫌だったのだ。三井さんの優しさを感じながら私はやはりセックスをするのが恐かった。三井さんが優しかったからこそ、セックスの後、晶のようにまるで別人になってしまったら、と恐くて堪らなかった。

「お前そうやって酒飲んで愚痴ばっか言ってるとパンツ穿かせる男にフラれるぞ」
「なんですかその面白そうな話」
「晶くん、ちょっと本気で黙ろうか。つーか、さっきから何度も黙れって言ってると思うけど」
「おお、直希、聞けよ。お前が今でも夢見てる女は今の男にてめーのボクサー穿かされてんだよ」
「え、その前になんで晶さんが都筑さんのパンツ事情知ってんすか。あれですか、スカート捲った的な」
「辞めよう、この話は。ほんと、勘弁して」

私は三井さんの姿を見ながらちらほらとかなりシリアスな回想に思いを馳せているというのに酔いが回って口が軽くなった晶は爆弾発言をぶちかます。
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