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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
「お前さ、そうやって俺ばっか悪いみたいなこと言うけどよ、あの頃俺に従ってたのはお前の意志だろ。正直俺はお前のこと都合よく使ってたよ、お前にも手あげた。だけど、お前は俺に逆らわなかった、今みたいにぶつかってもこなかった。お前に結婚しようって言われた時思ったよ、俺はこんな生きてんのか死んでんのかわかんねえ奴と生きてくのかって。んなこと続けていけるかよって」
「だからっていきなり出ていく奴があるか!」
「俺だっていっぱいいっぱいだったんだよ!わかんねー女だな!」

殆どノンストップで怒鳴り合い、私たちはお互い肩で息をしていた。はあ、と深く溜息を吐きぐしゃぐしゃと自分の髪を掻き撫でる。

晶が出ていった後、彼を恨んだ。この6年彼は何度も夢に現れた。現れては、好きだよ、愛してる、とそう言った。私は寂しさを理由に正常な判断能力を失った自分のことは愚かだと責めた。だが、違ったのだ。責めるべきは本心を彼にぶつけられなかった弱い、自分だ。

泣き出しそうになって俯くと煙草が一本差し出された。ボトムスのポケットに入れていたようで晶の手の中の箱はややひしゃげている。

それを受け取って、火を点けてもらった。晶も咥えた煙草に火を点けて、言葉を探すように煙を吐き出す。

「お前に偶然再会してヤった日に思ったよ、やっぱつまんねー女だって。でも、その次会った時、お前はまるで別人だった。生意気な口きいて、俺を睨んで、お前はちゃんと生きてた。お前がちゃんと生きてるって分かったから今日直希と会わせた。お前の為じゃねえ。あいつの為だ。あいつはお前の…いや、元をたどれば俺だけど…やっぱお前だ、お前のせいで立ち止まってる。あいつは良い奴だ、俺と違って優しい奴だ。そんなあいつをこれ以上立ち止まらせたくない」
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