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サイレントエモーショナルサマー
第18章 ferita
言い切った晶の顔は一度も見た事のない、真剣な男の表情だった。私に優しい言葉をかけてくれた時の顔でも、私を殴りつけてきた時の顔でもない。

その表情に流されそうにもなったが、ひとつ言ってやりたいことがある。溜息を吐きだしたいのを堪えすっと息を吸い込んで口を開く。

「じゃああの日別にセックスする必要なかったじゃん!」
「突っ込みたかったのとお前の泣き顔見たかったのもある。生中出しなんかお前にしか出来ねえし」
「くたばってしまえ!」
「ぎゃーぎゃーうるせえな。とにかく、俺はもし直希に恨まれることになったとしてもあいつが先に進む手助けがしたい」
「言ってることめちゃくちゃなの分かってんの?あんた三井さんの手助けしたいとか言いながら三井さんの名前出して私のこと脅した挙句3回も中で出したんだけど」
「馬鹿じゃねえの。俺にとって友情と性欲は別もんなんだよ。なんなら俺は今すぐお前とヤりたいね、お前の穴は最高だ」
「地獄に落ちろ。いっそ今から落としてやる」

真面目くさった顔をにやにや笑いに変えてこちらに手を伸ばしてくる。それを叩き落として吸殻を晶の持つ携帯灰皿に押し込む。

「あんたとは二度としない」
「元彼ふたりと3Pっつーのも興奮すんじゃね。ああ、パンツ野郎も呼んで4Pにすっか」
「なんでそうなんの!?」

そんなことになったら私がどうなるか、というよりも藤くんが晶になにをするか分からない。

「……恨みたかったら恨め、殴りたかったら殴れ。でも、直希と少しでもいいから話してやってくれ。頼む」

晶も煙草を吸い終えたかと思うと、急に真面目な顔を取り戻し私に頭を下げた。あまりに予想外の行為に面食らう。こんなことが出来るようになったのか。三井さんとの間には恐らく私が思うよりも深い情があるのだろう。

「分かった。話すから、だから頭上げて。それに、さっきも言ったけど私はもう晶のこと恨んだりしない。晶の言った通りだよ、晶だけが悪い訳じゃなかった。だからもう、ちゃんと過去にしよう」

私がそう言うと、逃げんなよ、と言って私の手に数枚の紙幣を押し付けゆっくりと去っていった。荷物はどうするつもりなのかと思ったが、そう言えば晶は軽装で手ぶらだった。
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