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サイレントエモーショナルサマー
第19章 Renatus
作業を終えてフロアに戻ってみると藤くんは文字通り馬車馬のように働いていた。ふふ、と笑ってデスクに戻ると隣には大分顔色の良くなった浩志が居る。
浩志のことは好きだ。これは自信を持って言える。だが、やはり藤くんに対して抱くおぼろげな感情とはまた違う。チカのことが好きだと断言できるのと同じ感覚だ。友愛。友情。もし、仮に浩志の性別が女であったとしても今のような関係になったのだろうか。
「……なんだよ、New都筑」
「今、処理中」
「はあ?」
「ね、浩志さ、もし私が男だったら私とつるんでたと思う?」
「つるんでたと思う」
「それはなんで?」
「楽だな、と思った奴がたまたまお前で、たまたま女だっただけだし。お前が今のまま男だったとしても、俺にとっては楽な存在になったと思う」
なるほど。たまたま、か。それなら私が浩志に対して他の男性とは違うと感じたのもたまたまだったのだろうか。
「お前最近変だよな」
「唐突だな」
「いや、ほら、忙しそうだし。今までだったら聞かないようなこと聞くようになったし」
「まあ今日からNew都筑ですからね」
「今日だけじゃねえって。お前最近仕事終わってからなにしてんだ?まじで料理でも習ってんのか」
「んー、とりあえず料理は習ってないね」
ぎくりとしたが、得意の情報の出し惜しみでかわす。浩志と業務後に飲みに行く機会が減っているのは事実だ。今日どこ行く?と聞かれれば、焼き鳥だのイタリアンだのと答えてそのまま会社を出ていた頃が遠い過去のように思える。
「私が、色々変わったら嫌?」
「色々って?」
「それは、色々、よ」
「意味分かんねえこと言ってないで仕事しろ仕事」
「いえっさー」
雑談タイムは終了らしい。私に向けていた視線をPCに戻した浩志の横顔を見やりながら私も仕事を再開する。
定時になって、上がるね、と浩志に声をかけると彼はまだもう少し仕事をしてから帰ると言った。お先です―、と残っている社員たちに声をかけながらフロアを出ていこうとすると隣の席の社員に捕まってなにか作業を押し付けられているらしい藤くんが見える。
一瞬こちらを向いた顔に、行っちゃうんですか、と書いてあるように見えたのは気のせいではないだろう。
浩志のことは好きだ。これは自信を持って言える。だが、やはり藤くんに対して抱くおぼろげな感情とはまた違う。チカのことが好きだと断言できるのと同じ感覚だ。友愛。友情。もし、仮に浩志の性別が女であったとしても今のような関係になったのだろうか。
「……なんだよ、New都筑」
「今、処理中」
「はあ?」
「ね、浩志さ、もし私が男だったら私とつるんでたと思う?」
「つるんでたと思う」
「それはなんで?」
「楽だな、と思った奴がたまたまお前で、たまたま女だっただけだし。お前が今のまま男だったとしても、俺にとっては楽な存在になったと思う」
なるほど。たまたま、か。それなら私が浩志に対して他の男性とは違うと感じたのもたまたまだったのだろうか。
「お前最近変だよな」
「唐突だな」
「いや、ほら、忙しそうだし。今までだったら聞かないようなこと聞くようになったし」
「まあ今日からNew都筑ですからね」
「今日だけじゃねえって。お前最近仕事終わってからなにしてんだ?まじで料理でも習ってんのか」
「んー、とりあえず料理は習ってないね」
ぎくりとしたが、得意の情報の出し惜しみでかわす。浩志と業務後に飲みに行く機会が減っているのは事実だ。今日どこ行く?と聞かれれば、焼き鳥だのイタリアンだのと答えてそのまま会社を出ていた頃が遠い過去のように思える。
「私が、色々変わったら嫌?」
「色々って?」
「それは、色々、よ」
「意味分かんねえこと言ってないで仕事しろ仕事」
「いえっさー」
雑談タイムは終了らしい。私に向けていた視線をPCに戻した浩志の横顔を見やりながら私も仕事を再開する。
定時になって、上がるね、と浩志に声をかけると彼はまだもう少し仕事をしてから帰ると言った。お先です―、と残っている社員たちに声をかけながらフロアを出ていこうとすると隣の席の社員に捕まってなにか作業を押し付けられているらしい藤くんが見える。
一瞬こちらを向いた顔に、行っちゃうんですか、と書いてあるように見えたのは気のせいではないだろう。