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サイレントエモーショナルサマー
第19章 Renatus
「…ん、ちょっと、藤くん、」
「本当に、嫌ですか?」

真っ直ぐ私を見つめる瞳は怪しくも美しい。その眼で見つめられたら私は逆らえない。薄く開いた唇がキスをしてくれと言っているように見えた。頬に手を伸ばし、キスを求める。

「……1回したら、藤くんの家に行きたい」
「約束します」
「あ、あと、シャワー浴びたいし、荷物先にどうにかしたい」
「シャワーは浴びましょう。でも、荷物は後にしてください」
「……主導権返して」
「それは難しい相談ですね」

微笑んでからキスをして、押し倒したばかりの私の身体を引き起こす。俺の勝ち、とばかりにご機嫌の藤くんに見つめられるとどきりとする。もしかしたら藤くんが一緒に居てくれれば上手く眠ることが出来るかもしれない。

そうなって欲しいと思いながら頬にキスをして、シャワー浴びようね、と立ち上がった。

藤くんはひよこのように私の後をついてきて、浴室をみるとかなり興奮したようだった。一緒にお風呂に入りたい、とせがまれたが、また今度と言って躱した。

「……緊張ってうつりますね」
「奇遇だね、私もさっき同じこと考えた」
「だって、散々してるのに志保さんが緊張してるみたいだから」
「……ここに越してから自分の家でセックスするの初めてだもん」
「…!志保さんのベッドに上がったのは俺だけってことですか。うわ、涙でそう。もうちょっと触っていいですか」
「前に浩志が寝たことあるよ」
「今のは聞かなかったことにします」

シャワーを浴びてから藤くんに抱き上げられベッドへと移動した。私の言葉でシーツを撫でていた藤くんの手がぴたりと止まったが彼はかぶりを振って私の声を追い払ったらしい。

初めての状況に妙に緊張する私をそっと抱き寄せるとキスをくれる。唇の端から頬、耳の付け根、耳たぶとゆっくりと移動していく熱が心地よい。

「緊張してる志保さんも新鮮でかわいいです」
「……っ」

照れくさくなって藤くんの首に腕をまわしながらキスをせびった。彼の膝の上に乗りあげ、ちゅ、ちゅ、と繰り返していくと藤くんは舌先をちろりと出して私を挑発する。その舌に吸い付いてから甘く噛むと背中に回った手が背骨の下から上へゆるやかに撫でていく。
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