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サイレントエモーショナルサマー
第19章 Renatus
挿れたまま私の身体を横向きにして、額や頬へキスを落とす。手は脇腹から腰骨を撫でていく。物足りなさで藤くんの首元へ手を伸ばした。すり寄って首筋に鼻先をうずめると下腹部がきゅんとする匂いがふわりと鼻腔を擽った。

暫くじゃれてからゆっくりとモノを引き抜く藤くんの身体は不思議なほど熱を失わず汗ばんでいた。ゴムの処理をして簡単にお互いの下腹部を拭きあった。なにも言わず、藤くんが腕を広げたから飛び込んで抱き着く。背中に触れる腕の優しさを感じながら再びベッドへ倒れ込む。

「…今日、うちに泊まっていく?」
「良いんですか?」
「……藤くんが居れば大丈夫かな、と思って」

藤くんの腕の中はいつでもあたたかい。このぬくもりが傍にあれば、眠ることが出来るかもしれない。

藤くんの希望で簡単に食事をしてから一緒に風呂に入った。自宅の湯船に湯を張ったのはいつ以来だろう。化粧を落とした私の顔が好きで好きでたまらないと何度も頬に口付けられ、赤面せざるを得なかった。

「志保さんの家に俺のパンツがあるってのはいいですね」
「君が穿かせるからだよ。でも、Tシャツとかなくてごめんね、あ、浩志が置いてったやつならあるよ」
「いいですか、志保さん。そういうことは言っちゃダメです。俺のこと煽ってるんですか」
「え?いやいや、煽ってないって。だってパンツだけじゃ寒くない?」
「冬だったら厳しいですけど今日は平気ですよ。てか、いつもはだいたい裸で寝てるじゃないですか」

藤くんのパンツが一枚だけ残っていてよかった。それを穿かせてから私は自分の下着をつけきっちり寝間着を身に纏う。ベッドへ向かう前に少しだけ夜のニュース番組を見た。天気予報は明日にも梅雨明けが発表されるかもしれないと言っていた。

「どうしたんですか、そんな怖い顔して」
「ううん、なんでもない。電気消すね」

電気を消してから先に横になった藤くんに寄り添うように横になった。赤子を寝付かせる時のように藤くんの手がぽんぽんと身体に触れると安心する。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

大丈夫、大丈夫。藤くんが一緒に居る。触れた肌には確かに熱があって、彼は私の隣で息をしている。縋りついて目を伏せた。ゆっくりと身体を叩く手のひらのテンポが遅くなっていく。

お願い、どうか、夢を見ずに済みますように。

目尻から涙が溢れだしたのを感じながら夜へと沈んだ。
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