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サイレントエモーショナルサマー
第20章 voce
「しーちゃん、見っけ。ぐーぜんじゃん、運命的な?」
「―!?」
驚いて立ち止まった。振り返ればにんまりと笑った隼人と目が合う。冷たい視線を感じてそちらを向くと瞳から色を失くした藤くんが隼人を見ている。これは、非常にまずい気配がする。
「ちょっと、離して…一応仕事中なんだから、」
「しーちゃんさ、どこ泊まってんの?帰ってきてる?気配しねえんだけど」
「余計なこと言わない!てか乳を揉むな!」
16時を過ぎのオフィス街の道端で抱き着かれ乳を揉まれる様はかなり目立つ。その上隼人の身なりは凡そ勤め人には見えない。辞めろ、と口を尖らせてもがくが隼人の腕は力を緩めない。
背筋が凍りそうな舌打ちが聞こえたかと思うと暴れさせていた腕を引かれ、藤くんの胸に抱きとめられた。ほっと息を吐いて彼の顔を見上げる。刹那、安堵は消え去る。
「……お知り合いですか」
「知り合いなんてもんじゃないね。ね、しーちゃん」
「あ、あはは…隼人くんこんなところでなにをしてるのかな」
「……隼人?」
ひ、と悲鳴を飲み込む。まずい、やばい。語彙よどこだ。藤くんの表情には見覚えがある。これはいつだか私が見知らぬ人にジュースをぶっかけられた時と同じだ。
藤くんの腕の中から逃れ、隼人から距離を取るように藤くんの背後へ回った。にやにや笑いながら藤くんを見る隼人の意図が読めない。こいつなんか余計なこと言いそうだ。早く立ち去りたい。
「ふ、藤くん…行こう。ね、時間なくなっちゃう」
「待ってよ。俺さ、一応しーちゃんのこと心配してんだけど。また泣きながら寝言言ってんじゃねえかって」
「な、なにそれ…そんなの知らないし、ほんとちょっと口にチャックして」
「しーちゃんさ、夏の夜だけ寝言言うんだよ。ひとりにしないでって泣くの。あんた、それ、聞いたことある?」
藤くんに向かってそう言いながら隼人のなにか企んでいるような笑みが深くなる。彼は恐らく私と藤くんがただの同僚ではないことに気付いている。挑発的な隼人に対して藤くんは押し黙ったままなにも言わない。
「―!?」
驚いて立ち止まった。振り返ればにんまりと笑った隼人と目が合う。冷たい視線を感じてそちらを向くと瞳から色を失くした藤くんが隼人を見ている。これは、非常にまずい気配がする。
「ちょっと、離して…一応仕事中なんだから、」
「しーちゃんさ、どこ泊まってんの?帰ってきてる?気配しねえんだけど」
「余計なこと言わない!てか乳を揉むな!」
16時を過ぎのオフィス街の道端で抱き着かれ乳を揉まれる様はかなり目立つ。その上隼人の身なりは凡そ勤め人には見えない。辞めろ、と口を尖らせてもがくが隼人の腕は力を緩めない。
背筋が凍りそうな舌打ちが聞こえたかと思うと暴れさせていた腕を引かれ、藤くんの胸に抱きとめられた。ほっと息を吐いて彼の顔を見上げる。刹那、安堵は消え去る。
「……お知り合いですか」
「知り合いなんてもんじゃないね。ね、しーちゃん」
「あ、あはは…隼人くんこんなところでなにをしてるのかな」
「……隼人?」
ひ、と悲鳴を飲み込む。まずい、やばい。語彙よどこだ。藤くんの表情には見覚えがある。これはいつだか私が見知らぬ人にジュースをぶっかけられた時と同じだ。
藤くんの腕の中から逃れ、隼人から距離を取るように藤くんの背後へ回った。にやにや笑いながら藤くんを見る隼人の意図が読めない。こいつなんか余計なこと言いそうだ。早く立ち去りたい。
「ふ、藤くん…行こう。ね、時間なくなっちゃう」
「待ってよ。俺さ、一応しーちゃんのこと心配してんだけど。また泣きながら寝言言ってんじゃねえかって」
「な、なにそれ…そんなの知らないし、ほんとちょっと口にチャックして」
「しーちゃんさ、夏の夜だけ寝言言うんだよ。ひとりにしないでって泣くの。あんた、それ、聞いたことある?」
藤くんに向かってそう言いながら隼人のなにか企んでいるような笑みが深くなる。彼は恐らく私と藤くんがただの同僚ではないことに気付いている。挑発的な隼人に対して藤くんは押し黙ったままなにも言わない。