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サイレントエモーショナルサマー
第20章 voce
排水溝に流れていく液体をぼんやり見ていると後ろからそっと抱き締められた。頬に触れる唇の熱が欲情を引きつれている。

「ふ、藤くん?もう大丈夫なの?」
「…この状況下で酔っ払ってられません」
「いや、君結構酔ってたでしょ。ちょ、待って、手!胸触らないの!」

ぺちぺちと手を叩くと身体が反転させられた。頬に藤くんの手が触れる。じっと目を見つめればキスをくれる。下唇を甘く噛んで、舌が私の口内へ入ってくる。

「んっ…ばか、ちょっと、てか酒くさい」
「やばいです。このキスは理性飛びそう」
「もうすぐ片付け終わるから待って。そしたらもうタクシー乗って帰ろう。ね、」

そんなの待っていられるか、と言わんばかりに再び唇を塞がれる。迷子になった手が藤くんのシャツを掴んだ。彼の手は器用に私の腰を抱きながらもう片方の手が服の中へと滑り込んでくる。

「ふじく…、だめ、会社だよ」
「もう誰もいないですよ」
「そういう問題じゃ、」

首筋をねっとりと舐められ、身体がぴくりと反応する。思わず甘ったるい声を出すと藤くんはにんまりと笑った。完全に素面の顔だ。

あれよあれよという間に流し台に押し上げられた。薄手のトップスをたくし上げられ、素肌に藤くんの唇が触れる。熱っぽい吐息が気を高ぶらせていくのに、ここでまで流されるなと制する自分が顔を出す。

「藤くん…こら!だめだってば、」
「俺、禁欲してたんですよ」
「たった2日でしょうが!」
「その2日がどれだけ長かったか」
「わ、私だって長く感じたけどさ、んっ」

私から言葉を奪うことなんて藤くんには容易い。身体を撫でまわしながらキスをして、耳たぶをそっと噛む。耳の付け根をぺろりと舐められたら、もっと、とねだってしまう。でも、会社で箍を外すわけにはいかない。
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