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サイレントエモーショナルサマー
第21章 futuro
「…煙草、辞めたの?」
私の不審な挙動に気付いたチカが問う。辞めたというよりなんとなく吸っていないだけだった。レモンサワーを少しだけ飲んでそんなようなことを言うとチカは意味深な笑みを見せる。
「なに、その顔」
「私がどんなに言っても頑なに煙草辞めなかったのに藤くんと一緒だと吸わないで済むんだなって思って」
「んー、なんか吸いたいなって思う暇がない感じ?」
「いいと思うよ。ま、私は煙草吸ってるときの志保の顔色っぽくて好きだけど、あれは吸わないに越したことはない」
チカは言いながら生ビールを飲み干してハウスワインの白を2つ注文する。煙草なんか吸ってるから晶のことを思い出すのだとチカは何度も私に煙草を辞めろと言った。私はその度に今は自分が吸いたくて吸ってるのだ、とかわしてきた。だが、今は不思議と喫煙の必要性を感じない。
大して酒の味は分からないが、寂れた居酒屋の酸化した白ワインはあまり美味しくなかった。眉を顰めて飲みながら塩の効いた枝豆をつまむ。
例の彼と上手くやっているのかと聞くと、相変わらず手を繋いだくらいだが楽しくやっているという。ちなみに名前はユウジさんと言うらしい。
「チカはさ、そのユウジさんのこと好きだって思う?」
「そりゃ思うよ。最初は探り探りだったけど、色々出かけたりしていく内に、ああ、好きだなって思うようになったよ」
「それは、いつ、切り替えるものなの?」
「え、なに言ってんの?」
「いや、人はさ、いつから友愛と恋愛を切り替えるのかなって」
「あのね…あんた、システムじゃないんだから…切り替えるとかじゃないの。気づいたら切り替わってんの」
ほう。そういうものなのか。考えて黙り込むとチカの手が私の頬へと伸びてくる。顔を上げればもう何年も向かい合ってきた優しい微笑みがそこにある。
「ポンコツ志保ちゃんに聞きます」
「はい」
「私のこと、好き?」
「もちろん。大好き」
「それは、いつから?」
「じゅ、14年くらい前からかな。気づいたら好きだった」
「じゃあ、なんだっけ…えっと、あ、そうだ、浩志。浩志のことは?」
「好き」
「それも、いつから?」
「いつだろ……分かんない」
「ほら、分からないでしょ。好きとか嫌いとかきっかけになることはあるだろうけど明確なものじゃないのよ」
きゅ、と私の頬を軽く抓ってチカの手が離れていく。
私の不審な挙動に気付いたチカが問う。辞めたというよりなんとなく吸っていないだけだった。レモンサワーを少しだけ飲んでそんなようなことを言うとチカは意味深な笑みを見せる。
「なに、その顔」
「私がどんなに言っても頑なに煙草辞めなかったのに藤くんと一緒だと吸わないで済むんだなって思って」
「んー、なんか吸いたいなって思う暇がない感じ?」
「いいと思うよ。ま、私は煙草吸ってるときの志保の顔色っぽくて好きだけど、あれは吸わないに越したことはない」
チカは言いながら生ビールを飲み干してハウスワインの白を2つ注文する。煙草なんか吸ってるから晶のことを思い出すのだとチカは何度も私に煙草を辞めろと言った。私はその度に今は自分が吸いたくて吸ってるのだ、とかわしてきた。だが、今は不思議と喫煙の必要性を感じない。
大して酒の味は分からないが、寂れた居酒屋の酸化した白ワインはあまり美味しくなかった。眉を顰めて飲みながら塩の効いた枝豆をつまむ。
例の彼と上手くやっているのかと聞くと、相変わらず手を繋いだくらいだが楽しくやっているという。ちなみに名前はユウジさんと言うらしい。
「チカはさ、そのユウジさんのこと好きだって思う?」
「そりゃ思うよ。最初は探り探りだったけど、色々出かけたりしていく内に、ああ、好きだなって思うようになったよ」
「それは、いつ、切り替えるものなの?」
「え、なに言ってんの?」
「いや、人はさ、いつから友愛と恋愛を切り替えるのかなって」
「あのね…あんた、システムじゃないんだから…切り替えるとかじゃないの。気づいたら切り替わってんの」
ほう。そういうものなのか。考えて黙り込むとチカの手が私の頬へと伸びてくる。顔を上げればもう何年も向かい合ってきた優しい微笑みがそこにある。
「ポンコツ志保ちゃんに聞きます」
「はい」
「私のこと、好き?」
「もちろん。大好き」
「それは、いつから?」
「じゅ、14年くらい前からかな。気づいたら好きだった」
「じゃあ、なんだっけ…えっと、あ、そうだ、浩志。浩志のことは?」
「好き」
「それも、いつから?」
「いつだろ……分かんない」
「ほら、分からないでしょ。好きとか嫌いとかきっかけになることはあるだろうけど明確なものじゃないのよ」
きゅ、と私の頬を軽く抓ってチカの手が離れていく。