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サイレントエモーショナルサマー
第22章 gelosia
「去年あいつ超めんどくさかったんですよ。研修でへとへとなのに今日の都筑さんの服装がどうとか、髪型が変わったとか…毎日毎日…」

完全にスイッチが入ったらしいミヤコちゃんはハイペースでサラダを食べながら堰を切ったように喋り出す。この1年の不満を全てぶちまけてやらんとする勢い。これは聞き役に徹する方が良さそうだ。

「私、藤に言ったんですよ。都筑さんは絶対中原さんと付き合ってるから流石にあんたでも無理だって。でも、藤はなにがなんでも諦めないって。で、飲み会で都筑さんが好きですとか宣言しちゃって。次の日からバカの一つ覚えみたいに好きです好きです言ってたじゃないですか。ま、今日もスルーされたってへこんでる姿は結構笑えましたね」

私の中でのミヤコちゃんは今時の可愛い女の子だったのだが、彼女は案外毒を吐く子だったようだ。

ミヤコちゃんの毒を受けながら、藤くんが私とミヤコちゃんの接触を良く思っていない風だったことを思い出す。これか。これを知られたくなかったのだろう。彼にも私に見せたくない姿があったわけだ。思わぬ形でそれを知ってしまい、申し訳ないと思いつつも、なんだか藤くんを可愛く感じる。

「自分が相手にされないからって、私に都筑さんの恋バナ聞き出してこいとか、プレゼントあげたいからなにが欲しいか聞いてこいとかって言うんですよ。酷いと思いません?で、私は都筑さんに声かけたり、欲しいもの聞くじゃないですか。なのに都筑さん、どこでもドアが欲しいとか魔法のランプが欲しいとか言うから…私、困りましたよ」
「あ、あはは…面目ない…昔から場に困るとふざける癖があって…」

ミヤコちゃんが度々私にしつこく欲しいものを聞いてきた理由が今になって分かり、それだけで彼女を苦手だと感じていたことが申し訳なくなった。彼女も渋々聞いていた訳だ。ごめんよ、ミヤコちゃん。

私がとんちんかんな受け答えをした所為で藤くんのプレゼント作戦は失敗どころか実行に移すことさえ出来なかったようだ。まあ、もし仮にプレゼントを渡されても以前の私なら頑として受け取らなかっただろう。
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